糖尿病の人は、 膵臓から分泌されるインスリンが不足しています。 インスリンは、 筋肉の細胞に作用して、 血液中のブドウ糖を筋肉細胞内に取り込ませます。 もちろん酸素と反応させて熱や運動のためのエネルギーに変換するためです。 糖尿病の本質は筋肉細胞内糖欠乏症であり、 その結果が高血糖であり尿糖なのです。 インスリン製剤は、 ヒトインスリン遺伝子を組み込まれた大腸菌や酵母菌が産生します。 産生されたインスリンの化学構造の一部を変えてやると、 皮下から血管内に移行する時間を速くしたり遅くしたりすることができます。 すると、 打ってすぐ効くインスリン製剤や、 1日に1回だけ打てばいいインスリン製剤を作ることができます。 こうして出来上がったインスリン製剤は、 インスリンアナログ製剤と言われます。
アナログとは、 情報科学用語であり、 情報を電圧や電流などの連続的な物理量で表して保存・伝送する方式のことです。 情報を離散的な数値で表すデジタルの反対語です。 どうしてインスリンアナログ製剤というのか疑問に思って調べてみると、 元々アナログとは 類似・相似 の意味で、 語源はギリシャ語で比例を表す言葉でした。 ということは、 インスリンアナログ製剤という表現は正統な使い方で、 情報科学用語のアナログのほうが異端的な表現なのです。
ではどうして、 情報を電圧や電流などの連続的な物理量で表すことをアナログと言うようになったのでしょうか? デジタルは、 標本化・量子化 という作業によって、 元々連続的な物理量を細かい部分に分け、 その部分の平均物理量を実数で表します。 こっちこそ類似品であり、 アナログと言わなければならないと思うのですが ・ ・ ・ ? そこで、 アナログ時計やアナログレコードを思い浮かべて考えてみることにしましょう。 両方ともスムースで連続的な変化をするもの( 時 や 音 )を表現します。 アナログ時計は常に一定の速さで回転する秒針で表現し、 アナログレコードの溝はナノレベルで見ると峡谷のようで、 連続的な勾配ベクトル場が針でトレースしたときに発する音の情報を持っています。 それらの動きや形態は、 連続的に変化する本物に比例していると言えます。 そういう意味では、 デジタルは本物をかなり改造していてそのコピーとは言えません。
追伸 :
実数は連続ですが、 有理数( 2つの整数を用いて分数で表すことのできる数 )は非連続です。 なぜなら、
などの無理数の隙間があるからです。
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