(1)まえがき
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次の数列は、 初項5で、 となり合う2つの項の差が6から1ずつ増えていく数列です。

第
項 を
で表すと、 次のようになります。
以上の辺々加えますと、 次のようになります。

頭の体操はこれでおしまいです。 ここまでは、 今日の話にはまったく関係ありませんでした。
次に巻尺を用意してください。 まず、 上記の目盛りの所で、 直角に山折りと谷折りを交互に繰り返してください。 次第に幅が広がっていくアコーディオンのようになります。
の所を左手で、
の所を右手で摘まんで、 伸ばしたり縮めたりしてみてください。次に、 上記の目盛りの所で、 直角に山折りばかりしてください。 平べったい渦巻き状になります。
の所を左手で、
の所を右手で摘まんで、 伸ばしたり縮めたりしてみてください。 伸ばしたときは次第に幅が広がっていくコイル状になります。-
さて、 本題に入りましょう。 なお、 これから大腸の「 折れ目 」という言い方をしますが、 本当はカーブです。 印象深くするために、 この言葉を使用させていただきます。
大腸はどちらかというと山折りになって曲がっており、 谷折りの所は1か所だけです。 大腸を4つの大きなパーツに分けますと、 肛門側から順に、 S状結腸、 下行結腸、 横行結腸、 上行結腸 となります。 4つのパーツの移行部はすべて山折りになっています。 下行結腸 と 上行結腸 は腹壁に固定されていて真っすぐですが、 固定されていない S状結腸 と 横行結腸には、 中央に折れ目があります。 S状結腸の中央は山折りになっています。 横行結腸は、 斜め前方にたわんでねじれており、 中央が谷折りになっています。
表が白で裏が灰色の細長い長方形の画用紙を用いて大腸のモデルを作ると、 次のようになります。 左がこのモデルを正面から見た図で、 右が右側面から見た図です。

これから大腸内視鏡の部位にニックネームを付けて行くことにします。
大腸内視鏡の先端から約10cmの所は、 手元のハンドル操作で自由に曲げることが出来るようになっています。 これを「 第1関節 」と言うことにします。 大腸内視鏡は、 手元と先端は固いですが、 それ以外は比較的柔らかくて曲がったりねじれたりします。 これを「 第2関節 」と言うことにします。 大腸内視鏡は、 直視鏡といって望遠鏡で覗いたように真っすぐ先が見えるようになっています。「 第1関節 」を屈曲させたときの大腸内視鏡の映像の上側に近い方の「 大腸内視鏡の先端の近くの側面部分 」を「 腹 」と言い、 その反対側を「 背 」と言うことにします。「 第1関節 」を屈曲( 前屈 )させると、 先端は「 腹 」の方向に曲がります。
大腸内視鏡のモデルは、 2つの剛体を管状の軟体が結んでいるもので、 ちょうど聴診器が大腸内視鏡のモデルになります。 大腸内視鏡の第一関節の操作以外の手元に作用させた力が先端にどのように伝わるかに関しては、 次のような法則があります。 ただし、 大腸内視鏡の「 第2関節 」が曲がっているときは、 曲がりの内側に固定された棒があるものとします。 力の伝達に関して、 この棒の役割をしているのは、 実際には、 挿入された大腸内視鏡の筒になっている、 アコーディオンのように折りたたまれていて、 かつ、 腹腔内で固定されていない( 自由に動く )部分の大腸です。
押す力は、「 第2関節 」が曲がっていたら、 先端に伝わらない。( 「 第2関節 」の曲がりをそれ以上にならないようにする力が働いている
場合は、 伝わることがある。)
引く力は、「 第2関節 」が曲がっていても、 先端に伝わる。( 途中で「 第2関節 」の曲がりが減少する場合は、 伝わらないか、 また
は、 逆方向の力になって伝わることがある。)
ねじる力は、「 第2関節 」が曲がっていても、 その方向のまま先端に伝わる。( 途中で「 第2関節 」の曲がりが減少する場合は、 伝わらないことがある。)
大腸内視鏡の挿入の基本的考え方は、「 大腸をアコーディオンのように折りたたんでいく。」ということです。 したがって、「 大腸の中になるべく空気を挿入しないこと。( 大腸内視鏡は、 空気や水を挿入したり、 それらを吸引したりすることができます。)」と「 大腸内視鏡を押すだけでなく、 押したり引いたりねじったりすること。」です。 また、「 管腔の奥を映像の真ん中に入れ、 手元をねじることによって『 背 』をなるべくに腸管に接触させながら挿入すること。」や「 押すときは、『 第1関節 』は伸展させておく( 真っすぐにしておく )こと。」も大切です。
大腸の折れ目を通過するときの基本的考え方は、「 第一関節を屈曲させることによって大腸の折れ目を超え、 その後は、 第1関節の屈曲をゆっくりと戻しながら、 大腸内視鏡を直線化するかまたは第2関節を屈曲させること。」です。 したがって、 第一関節の屈曲操作によって大腸の折れ目を超えた後は、 大腸内視鏡をねじりながら引くという動作になります。( ただし、 固定された腸管 から 固定されていない腸管 への挿入である 下行結腸 から 横行結腸 への移動のときは、 押します。)
大腸内視鏡のねじり方の基本は、 次のようなものです。
S状結腸の中央の山折りを超えるときは、 右ネジ回し。
S状結腸と下行結腸の移行部の山折りを超えるときは、 右ネジ回し。
下行結腸と横行結腸の移行部の山折りを超えるときは、 左ネジ回しで押す。
左半側横行結腸を通過するときは、 左ネジ回しで押す。
横行結腸の中央の谷折りを超えるときは、 左ネジ回し。
右半側横行結腸を通過するときは、 右ネジ回しで押す。
横行結腸と上行結腸の移行部の山折りを超えるときは、 右ネジ回し。
以外の折り目を超えるときのねじりは、 引きながら行うこと。ねじりの方向を体感するには、 ポケットホルダー付きのボールペンを使用します。 ポケットホルダーを「 腹 」に見立てます。 先ほどの大腸のモデルの正面図を見ながら、 画用紙の表側( 白い方 )に常にボールペンのポケットホルダーが付いてない側が接触しているイメージをもって、 左手の人差し指と親指でボールペンの握りの部分を持ってボールペンを腸の奥へと進めて行ってください。 折り目を超えるときは、 右手の人さし指をボールペンのポケットホルダーが付いてない側にあてがうといいでしょう。 横行結腸に入ったら、 ボールペンを右手に持ち替えてください。 そうして
のときのボールペンの回転を、 手の指で感じ取ってください。聴診器の両端をそれぞれ左右の手で持って伸展させ、 右手側を1回ねじった後に、 両端を近づけますと、 聴診器はループを作ります。 ねじるのは、 回転させるのとは違います。 ねじりがほどけるときには回転がおこります。 ねじりとは、 圧縮や牽引のような応力の仲間です。 弾性体におけるねじりとは、 両端で反対方向の力のモーメントが作用し続けている時の弾性変形です。 真っ直ぐになった長い管のねじれの場合は、 一端の力をなくして力のモーメントをとると、 管は回転しねじれが解けます。 また、 管の中央を屈曲しながら両端を近づけると、 合成された2つの力のモーメントが、 管にループを形成してねじれが解けます。 このループを作った状態から元の真っ直ぐな状態にすることは、 再びねじることになります。 ねじられた状態は、 位置エネルギーが高い状態であり、 ねじれが解けるとは、 その位置エネルギーが運動エネルギーに変換されることです。 熟練した医師は、 大腸内視鏡の 第2関節の屈曲 や ねじれ の状態を、 レントゲン透視を利用しないでも、 手元に力を作用させた時のカメラの映像の変化のしかたによって、 感じ取っているのです。
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