この東洋的な歌曲というか交響曲。20歳過ぎの私は、蛍光灯だけの下宿部屋で、買ったばかりのステレオでクレンペラー指揮のレコードを回し針からヘッドホーンを経て耳へ、そしてサントリーレッドをちびちび舐めながら日記を書いて、厭世観に浸っていました。
1908年にマーラー( ドイツ )は「大地の歌」という副題「 テノールとアルトとオーケストラのための交響曲 」を発表しました。彼は「 交響曲第9番のジンクス 」を嫌って、この交響曲には第9番を付けませんでしたが、次の交響曲第10番の制作半ばで亡くなっています。
マーラー 大地の歌 第1楽章 より
「 大地の悲しみによせる酒の歌 ( Das Trinklied vom Jammer der Erde ) 」
※ 李白の「 悲歌行 」を原詩としています。
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Schon winkt der Wein im gold'nen Pokale,
doch trinkt noch nicht, erst sing' ich euch ein Lied!
Das Lied vom Kummer
soll auflachend in die Seele euch klingen.
Wenn der Kummer naht,
liegen wust die Garten der Seele,
welkt hin und stirbt die Freude, der Gesang.
Dunkel ist das Leben, ist der Tod.
Herr dieses Hauses!
Dein Keller birgt die Fulle des goldenen Weins!
Hier, diese Laute nenn' ich mein!
Die Laute schlagen und die Glaser leeren,
das sind die Dinge, die zusammen passen.
Ein voller Becher Weins zur rechten Zeit
ist mehr wert, als alle Reiche dieser Erde!
Dunkel ist das Leben, ist der Tod.
Das Firmament blaut ewig und die Erde
wird lange fest steh'n und aufbluh'n im Lenz.
Du aber, Mensch, wie lang lebst denn du?
Nicht hundert Jahre darfst du dich ergotzen
an all dem morschen Tande dieser Erde!
Seht dort hinab!
Im Mondschein auf den Grabern
hockt eine wild-gespenstische Gestalt.
Ein Aff' ist's! Hort ihr, wie sein Heulen
hinausgellt in den susen Duft des Lebens!
Jetzt nehmt den Wein!
Jetzt ist es Zeit, Genossen!
Leert eure gold'nen Becher zu Grund!
Dunkel ist das Leben, ist der Tod!
日本語訳( 西野茂雄 訳 ):
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酒は黄金の盃の中ですでに私たちを誘っているが
口を付ける前にまず一曲の歌を君たちのために歌おう!
この憂愁を歌う歌も、
君たちの心には魂の笑いとなって響いてほいいものだ。
もしも悲しみが忍び寄るなら、
心の花園は荒涼と末枯れて、
喜びも歌声も色あせ滅び去ってしまうだろうから。
生は暗く,死もまた暗い。
この家の主よ。
あなたの酒蔵は黄金の酒で満たされている!
私の持ち物は、ここにある一面の琴だ!
琴を弾ずることと盃をかわすことは
なんと似つかわしいことだろう。
ふさわしい時を得た一杯の酒は
この世のあらゆる王国よりも尊い。
生は暗く,死もまた暗い。
天は永遠に澄み渡り、大地は
ゆるぎなく立って、春くれば花咲く。
だけど人間はどれだけ生きられるというのだ?
許されているのは百年に満たぬ年月、
この世のはかないなぐさみに興じることだけ。
見るがいい、あそこを!
月の光を浴あびて
墓地にうずくまる物の怪みたいな怪しい姿を!
あれは一匹の猿だ! 聞くがいいあの猿の叫びが
生の甘美な香りを破って、かん高く響き渡るのを!
いまこそ盃を取れ、友よ、今がその時だ!
黄金の盃を飲み干すがいい!
生は暗く,死もまた暗い。
李白の「 悲歌行 」の日本語訳:
※ https://www.kanzaki.com/music/ecrit/mahler-erde-trans.html より
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悲しみ来たるかな
悲しみ来たるかな
主人に酒が有るが、しばらく斟まないで
まず聴いてくれ、我が一曲、悲来の歌を吟じるのを
悲しみが来たると吟ずることもまた笑うこともなく
天下には誰もいない、我が心を知る人は
君には数斗の酒が有る
我には三尺の琴が有る
琴が鳴り酒を楽しむ、両者そろって相い得れば
この一杯には千鈞もの金だってかなわない
悲しみ来たるかな
悲しみ来たるかな
天は長いと雖も、地は久しいと雖も
金や宝玉で満ちた堂を守り続けることはできない
富や貴位だって百年も能くしない、幾何のものか
死も生もそれぞれ一度、人皆それが有る
孤猿が座して啼く、墳上の月のもとで
だからまず杯中の酒をのみ尽くすことさ
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