バイオリンの音階練習は二長調から始めるのがいいと思います。 というのも、 バイオリンという楽器は、 二長調においては純正調で素直に弾けば使用していない開放弦が自然に共鳴するようなしくみになっているからです。 これに対して他の調ではバイオリンをよく響かせるためには純正調音階を少しずらさなければなりません。 ( 実際の演奏では、 奏者がわざとずらすというより楽器の響きが自然に純正調音階をずらしているのですが。)
図は、 バイオリンにおける純正調の指のポジションです。 レとミの間 と ソとラの間 が他の一音差に比べて少し狭くなっています。

まずはファーストポジションで二長調の音階を弾きます。 まず図の一番左列のドを小指で押さえます。 一弦高い開放弦(ド)との重音( 隣り合う弦を同時に鳴らすこと )において心地よく響くところの位置です。 次に左から2番目の列のレを人差し指で押さえます。 これも一弦高い開放弦(ソ)との重音において心地よく響くところの位置です。 その次に第2列のミを中指で押さえます。 これも一弦高い開放弦(ソ)との重音において心地よく響くところの位置です。 その次に第2列のファを薬指で押さえます。 これは一弦低い開放弦(ファ)との重音において心地よく響くところの位置です。 その次に第2列のソを小指で押さえます。 これは一弦高い開放弦(ソ)との重音において心地よく響くところの位置です。 その次に第3列のラを人指し指で押さえます。 これは一弦低い開放弦(ド)との重音において心地よく響くところの位置です。 その次に第3列のシを中指で押さえます。 これは一弦高い開放弦(レ)との重音において心地よく響くところの位置です。 こういうふうにして第4列までいったら逆戻りします。 開放弦は使いません。 ピアノで育った人は平均律に慣れているためにミの音とラの音が高くなりがちなので注意してください。 決してピアノに合わせて音階を取ってはいけません。
子ども用のバイオリンには、 人差し指と薬指の押さえる位置に点がついていることがありますが、 この点の間隔は ラとドの間隔 ではなく レとファの間隔 になっています。 正確な音程が取れるようにするためには、 重音による和音の練習がいいと思います。 二長調でいうと、「 ソ(第1列)ミ 」、「 レ(第2列)シ 」、「 ド(第3列)ラ 」 とか、「 ラ(第1列)ファ 」、「 ミ(第2列)ド 」、「 シ(第3列)ソ 」 とか、「 ファ(第2列)ラ 」、「 ド(第3列)ミ 」 とかです。
次にサードポジションで二長調の音階を弾きます。 第5列のドを中指で押さえ、 次にレを薬指で押さえます。 こういうふうにして第8列までいったら逆戻りします。
ハ長調のファーストポジションにおける指のポジションを二長調と同じにしていては楽器は響きません。 つまり、 純正調で弾いたのでは響きません。 ハ長調のファーストポジションにおける純正調の音階は、 図でいうと第3列から第6列になります。 これを少しずらさなければいけないのです。 どのようにずらすかというと、 人差し指と薬指は一弦低い開放弦との重音で心地よく響く位置に、 中指と小指は一弦高い開放弦との重音で心地よく響く位置にです。 すると、 いたるところで純正調からのずれが生じ、 たとえば一オクターブ上のドが下のドの倍音よりも高くなったりします。 音程が取りにくくバイオリンが響きにくい長であると言えます。
ヘ長調のファーストポジションにおける指のポジショニングはどうでしょうか? 図でいうと第4列から第7列になります。 ずらし方はハ長調と同じです。 すると、いたるところで純正調からのズレが生じますが、 一オクターブ上のドは下のドの倍音と同じです。 こうしてできたへ長調の音階で演奏する曲は、 明るくのどかで牧歌的な響きがするそうです。
短調なら音階練習は二短調から始めるのがいいと思います。 というのも、 バイオリンという楽器は、 二短調においては純正調で素直に弾けば使用していない開放弦が自然に共鳴するようなしくみになっているからです。 ファーストポジションで二短調の音階を弾くときは、 次の図の一番左列のラを小指で押さえます。

イ短調の音階は、 純正調に比べて、 ラとシの間隔がやや短く、 ドとレの間隔がやや長く、 ソとラの間隔がやや長くなります。 ファーストポジションでの人差し指の位置は一弦高い開放弦との重音において心地よく響くところになります。
以上、「 調 」を意識したバイオリンの音程についての理論を述べました。 この理論は楽器をよく鳴らせるためのものです。 しかし、 実際の合奏ではこの理論通りにはいきません。 なぜなら、 物理学的共鳴の視点からすると、 バイオリンや他の楽器の構造上、 すべての和音について自分の楽器が完璧に共鳴し かつ 共演者の楽器とも完璧に共鳴することはできないのです。 しかし、 人間の感覚はファジーなものであり、 合奏の演奏者の音程を取る指の位置は、 自分以外の楽器と響き合うよう無意識に微調整されます。 また、 音程にはヴィブラートのような遊びがあります。「 バイオリンは背中で弾きなさい。」と言う先生の言わんとするように、 演奏は頭でするものではなく心や体でするものです。 だから「 音楽 」なのです。
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