(1)肺の換気機能測定
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肺の機能は「 ガス交換 」です。 ガス交換とは、 空気中の酸素を血液中に取り込んで、 代わりに血液中の二酸化炭素を空気中に放出することです。 ガス交換は「 換気 」と「 肺胞内吸気と血管内血液の間のガス拡散 」から成ります。「 換気 」とは、 息を吸ったり吐いたりして肺内の空気を入れ換えることです。 簡易的に「 換気機能 」を測定する「 スパイロメーター 」は「 肺活量 」測定と「 努力的呼気流速の時経的変化 」測定から成ります。 肺活量不足は「 拘束性換気障害 」といわれ、 間質性肺炎でよくみられ、 1秒間の努力的呼気量低下 や 全般的な努力的呼気流速低下 や 早期の努力的呼気流速減退 などは「 閉塞性換気障害 」といわれ、 気管支喘息でよくみられます。
「 肺活量 」は自動車の「 排気量 」に相当します。 多いほど換気力は強いと言えます。 日本人の基準値は、 統計により性別年代別に設けられています。「 努力的呼気流速の時経的変化 」を表したグラフは「 フローボリューム曲線 」と言われます。 フローボリューム曲線の横軸は時間で、 縦軸は「 流速 」になっています。「 流速 」の英語訳は
flow volume
ではなくて
flow speed
であり、「 流速 」の単位は、
です。 一方、
flow volume
の日本語訳は「 流速 」ではなくて「 流量 」であり、「 流量 」の単位は
です。「 流量 」とは気体または液体が単位時間当たりに移動する体積のことです。 したがって、「 フローボリューム曲線 」というネーミングは間違っていると言えます。断面積
に垂直方向の流速
をかけると、 流量
になります。 検査で使用するマウスピースは規格化されていますので、 その断面積を
としますと、「 流量 」は「 流速 」に
をかけたものになりますので、 フローボリューム曲線の縦軸を器械が計測してくれる「 流速 」から「 流量 」にわざわざ変換しなくても、「 呼気流量の時経的変化 」はイメージできるわけです。 したがって、 あながち「 フローボリューム曲線 」というネーミングが間違いだとも言えないわけです。「 フローボリューム曲線 」を時間で積分すると、 その時間での努力的呼気量になります。「 閉塞性換気障害 」の大まかな目安は、 1秒間の努力的呼気量 の 努力的肺活量 に対する比率が7割以下になっていないかどうかです。 早期の努力的呼気流速減退の判定は、「 努力的呼気量が肺活量の50%になった時点での努力的呼気流速 」の「 努力的呼気量が肺活量の75%になった時点での努力的呼気流速 」に対する比率から求める方法が用いられています。 不思議なようですが、 早期の努力的呼気流速減退がある場合は、 その比率は上昇します。 その理由は、 申し訳ありませんが、 呼吸器科の先生にお尋ねください。
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人工呼吸器が出来ることは、 次の4つです。
吸気酸素濃度設定
容易に換気できる環境づくり
補助換気
完全換気
空気中の酸素濃度は21%です。 肺炎や心不全のために、 動脈血液中の酸素が少なくなっている患者さんには、 マスクや鼻孔カニューラを用いて100%濃度の酸素吸入をしていただきますが、 呼吸により空気と一緒に吸入されますので、 肺に届く吸気の酸素濃度は、 25%からせいぜい50%です。 また、 1分間当たりの換気量 や 口呼吸と鼻呼吸の割合 などによって、 肺に届く吸気の酸素濃度が大きく変化します。 この点、 人工呼吸器を使用すると、 100%までの酸素を設定どおりの濃度で供給することができます。
吸気力が落ちていたり、 あるいは呼気終末に終末気管支閉塞や肺胞密着を起こす患者さんにおいて、 閉鎖呼吸回路内圧を上昇させてやると、1回換気量を増加させたり、 効率的肺胞内換気を行うことができます。 最近は、 気管挿管や気管切開をせずに、 密着型閉鎖式マスクで行う方法も増えています。
患者さんがしっかりと換気しているときは何もせず、 1回換気量や換気回数が低下すると、 患者さんの呼吸にあわせて足りない分を肺に吹き込んでくれます。 この方法を用いることが最も多いです。
全く換気をされなくなった患者さんには、 呼吸器が設定どおりの1回換気量と呼吸数で換気をしてくれます。 設定の平均は
です。内呼吸とは、「 生物学的呼吸 」とも言われ、 細胞内のミトコンドリアの中での化学エネルギーから熱や運動エネルギーへの変換機構のことを言います。 TCA回路( クエン酸回路 )のことです。 外呼吸とは、「 ガス交換 」のことで、 一般的な呼吸のことです。 外呼吸は「 換気 」と「 ガス拡散 」とからなります。 人工呼吸器が出来るのは外呼吸の外側だけであって、 外呼吸の内側の「 拡散 」まではできません。「 換気 」と「 拡散 」の両方があって初めて外呼吸が成立するわけですから、 正確には人工呼吸器は「 人工呼吸器( レスピレーター )」ではなくて「 人工換気器( ベンチレーター )」です。
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