夜行フェリー
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2012.05.04


  夜のフェリーの中では、 たくさんの同郷の人たちが絨毯の上に寝ころがっている。 ゴールデンウィーク中の九州の夫婦二人旅を終えようとする私は 「 僕、 何処行っとたの? 何処へ帰るの? おばちゃんは、 これから愛南町へ帰るの。」 と言う声で目覚めた。 19:50 あと20分で三崎港に到着だ。 陸に上がったらまた1時間ほど車を走らせなければならないので、 寝入っている妻を残して、 眠気を覚ますためにデッキに出た。

  真っ暗な中を、 船は自分を照らしながら走っている。 他の船に自分の存在を知らせるためだ。 夜の海は黒く少量の光は吸収してしまう。 その証拠に、 船の影が映らない。しかし、 船の走行によって白い波しぶきが立つと、 そこに船の影が現れる。 波しぶきは、 細かな空泡を無数に含んだ海水である。 それは、 すべての光を反射する。 したがって、 白くてスクリーンのように船の影を映す。

  佐田岬の先端が、 地平線近くのかすかなオレンジ色の帯の中にうっすらと浮かんでおり、 灯台の光が独自のリズムで強くなったり弱くなったりしている。 反対側のデッキに回ると、 八幡浜の街の灯なのか、 はるか彼方の山の向こうの一部がかすかにボーッと青白くなっていた。