光が水面に対して斜めの方向から入ると、一部は反射します。この現象は、量子力学が発達する前は、飛んできた光子たちの一部が反射していると考えられていました。しかしそれは、水面に存在する水の分子が、やってきた光によって振動して、発生した電磁波たちが干渉しながら水の外に伝わっていくために起こっていることが解明されました。また、水の中で光の伝わる速さが遅くなる原因にも、この水の分子が発する電磁波が関与していることが分かってきました。水中で光の伝わる速さが遅くなるのは、入ってきた光と水の分子が発する電磁波が合成されるためです。そのしくみを解説しましょう。まずは、次の図をご覧ください。

ベクトルA と ベクトルA’ は共に大きさが1で起点が原点にあります。ベクトルA に ベクトルB を加えることによって ベクトルA’ を作ることを考えます。もし ベクトルA’ が ベクトルA に限りなく近いときは、ベクトルBは大きさが限りなく0に近くて方向はベクトルAに対して垂直になります。このときのベクトルBを d B と表すことにしましょう。
ベクトルAは複素平面上にあって、原点を中心にして反時計回りに角速度の大きさ ω rad / 秒 で等速円運動しているものとします。すると、ベクトルAの大きさの虚数成分は sin ( ω t ) で表される波を表します。ベクトルA は ベクトル d B ( d B の角速度の大きさも ω です ) に常に付きまとわれて ベクトルA’ ( ベクトルA’ の角速度の大きさも ω です ) になっているとしてください。するとベクトルA’ の大きさの虚数成分は sin ( ω t − d θ ) で表される波を表します。この場合、ベクトルA’ は ベクトルA よりも位相が d θ rad だけ遅れています。ベクトルA’ が ベクトルA の位置になるまでにかかる時間は d θ / ω 秒です。ということは、ベクトルA’ は ベクトルA より d θ / ω 秒遅れているということです。
波である光は水の中を進むたびに新たな d B に絡まれて、どんどん遅れていきます。その遅れの程度は波が水中を進んだ距離に比例します。ということは、光の波に多くのd B が加わってできた合成波の速さは、空気中の光の速さに比べて一定の程度で遅くなっているということになります。また、合成波の振動数は元の光の振動数と同じであり、 波の速さ = 波長 × 振動数 ですから、合成波の波長は元の光の波長よりも短くなっています。
水の中を光 ( 電磁波 ) が通過すると水の分子は振動を起こし、新たな電磁波を次々と生み出します。d B がじゃんじゃん生まれるということです。この新たな電磁波の加算合成による位相遅延結果・伝達遅延効果ひいては波長短縮効果は、光が再び水から出て行くときにパッと消滅します。
振動数の大きい光ほど、水中での伝達速度は遅くなります。その理由は d B が大きくなるためです。つまり、水の分子の振動によって発生する電磁波の振幅が大きくなるために、新たな電磁波の加算合成による位相遅延結果・伝達遅延効果が大きくなるためです。
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