見たいものを目立たせる技術
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2012.03.08


  消化管の一番上っ面の「 粘膜 」に存在する血管は、 細い物ほど、 表面に近い浅い所に網状になって存在します。 このような粘膜表層の毛細血管を「 上皮乳頭内血管 」と言います。 早期癌では、 上皮乳頭内血管が増殖したり、 あるいは、 それが太くなったり変形したりしますので、 上皮乳頭内血管を詳細に観察することによって、 極初期の小さくて浅い癌を発見することができます。 上皮乳頭内血管の形状は、 普通の胃カメラでは観察することが出来ず、「 NBI 併用拡大内視鏡 」という特殊な胃カメラを用いなくてはなりません。

 NBI は Narrow Band Imaging の略で、 照明の光の波長を操作することによって、 上皮乳頭内血管を見えやすくする技術のことを言います。 上皮乳頭内血管が「 拡大内視鏡 」でも見えない理由には2つあります。 1つ目は、 それよりも深い所に存在する粘膜内の毛細血管と重なるためです。 2つ目は、 上皮乳頭内血管は赤色なのですが、 背景色もピンクであり、 色彩の異なる程度が少ないためです。 この2つを一挙に解決してくれたのがNBI です。 NBI の実際は、 波長 の藍光 と 波長 の緑光を混ぜた光を使って照明するということです。 比較的波長の短い の藍光は、 粘膜の表層で反射されて粘膜の深い所には入って行きにくいという性質を持っています。 したがって、 上皮乳頭内血管 と それ以外の粘膜内毛細血管 の色彩がやや異なってきます。 次に、 赤色をした上皮乳頭内血管は、 2つの光を吸収しほとんど光を反射しませんので黒茶褐色に見え、 一方、 背景のピンク色は緑色がかった肌色を呈します。 このように、 色彩の異なる程度が大きいので上皮乳頭内血管が目立ちます。 早期癌では、 癌の厚みによっても糸ミミズのように見える上皮乳頭内血管の太さや形が変わりますので、 早期癌の進行度もわかります。 癌の進行度には、 癌の表面積ではなく深さが関与しています。