【 問 題 】
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A君、B君、Cさんがいます。封筒が7枚あります。封筒の中にはそれぞれ ¥1000 ¥2000 ¥4000 ¥8000 ¥16000 ¥32000 ¥64000 入っています。お金はすべてCさんのものです。Cさんだけはどの封筒にいくらのお金が入っているのかを知っています。そして、Cさんはこの7枚の封筒の中から、A君に ¥4000 が入った封筒を渡し、B君に ¥8000 が入った封筒を渡します。それは、Cさんが事前にサイコロを振って3の目が出ていたためです。もし1の目が出ていたときは、CさんはA君に ¥1000 が入った封筒を渡し、B君に ¥2000 が入った封筒を渡すことになります。
そこでCさんは2人にこう言います。「 自分が手にしている封筒の中身をこっそりと見てもいいですが、絶対に自分が手にしている金額を言ってはいけません。あなた方の選んだ封筒の中に入っている金額は 1:2 の比にしています。封筒の中のお金をさし上げますが、2人とも交換を希望する場合には封筒を交換してから中のお金を手にしてください。一方だけが交換を希望する場合は、交換は無しです。」
A君の考え:
今私が手にしているのは ¥4000 である。もし、B君と封筒を交換したならば、今よりも増える金額の期待値は ¥1000 である。よって、B君と封筒を交換しよう。
B君の考え:
今私が手にしているのは ¥8000 である。もし、A君と封筒を交換したならば、今よりも増える金額の期待値は ¥2000 である。よって、A君と封筒を交換しよう。
というわけで、2人は封筒を交換することになりました。その結果、A君は最初より ¥4000 多くなって喜び、B君は最初より ¥4000 少なくなって悔しがりました。
以上の話、なんか怪しくないですか? 結果的に一方が得をして一方が損をしましたが、そこはおかしくないのですが、2人とも交換により獲得金額が増える期待が持てるところがおかしいと思いませんか? 期待値においても、一方が得をするなら他方は損をしなければならないのではないでしょうか?
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この問題は「2つの封筒のパラドックス」とほぼ同じです。
Cさんが無作為に(¥1000, ¥2000 ),(¥2000, ¥4000 ),(¥4000, ¥8000 ),(¥8000, ¥16000 ),(¥16000, ¥32000 ),(¥32000, ¥64000 )の6種類の中から選んで、さらに無作為に2つの封筒をA君とB君に振り分けた場合について考えてみます。
まず、A君が自分の封筒の中身を知る前の時点での、A君が交換によって増やせる金額の期待値を求めてみます。
A君が最初手にする金額が ¥1000 のとき、交換によって増える金額は ¥1000 。
A君が最初手にする金額が ¥2000 のとき、交換によって増える金額の期待値は ¥500 。
A君が最初手にする金額が ¥4000 のとき、交換によって増える金額の期待値は ¥1000 。
A君が最初手にする金額が ¥8000 のとき、交換によって増える金額の期待値は ¥2000 。
A君が最初手にする金額が ¥16000 のとき、交換によって増える金額の期待値は ¥4000 。
A君が最初手にする金額が ¥32000 のとき、交換によって増える金額の期待値は ¥8000 。
A君が最初手にする金額が ¥64000 のとき、交換によって増える金額は −¥32000 。
したがって、交換することによって手持ちの金額が増加する期待値は、次の式で与えられます。
1/12 × ¥1000 + 2/12 × ¥500 + 2/12 × ¥1000 + 2/12 × ¥2000 + 2/12 × ¥4000 + 2/12 × ¥8000 − 1/12 × ¥32000
=→ 1/121 ×( ¥1000 + ¥1000 + ¥2000 + ¥4000 + ¥8000 + ¥16000 − ¥32000 )
=→ ¥0
というわけで、A君が自分の封筒の中身を知る前の時点では、A君は封筒を交換しても交換しなくても獲得できる金額の期待値は変わらないことが分かりました。
このことは、次のシミュレーションを見ても明らかです。
プログラムの内容:
では、A君とB君が自分の封筒の中の金額を知った後の期待値について考えてみましょう。
A君やB君がはじき出した期待値は幻の「心理学的期待値」で、2人が封筒を交換する理由となります。しかし、2人とも冷静に考えれば、「数学的期待値」は交換してもしなくても今手にしている金額と変わらないので、交換してもしなくてもどちらでもいいことが分かるのですが・・・。人間は面白い行動をするものです。
しかし、実際はA君やB君の間で封筒の交換は行われません。人間は基本的には自分のことしか考えることのできない生物に属するからです。その理由については、次の論文をご覧ください。
大学生のための数学 > 論理学 > 7つの封筒のパラドックス( ゲーム理論編 )
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