音名 と 階名 と 調
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2011.08.15


  クラシック音楽を味わうのに、 フルスコア( 総譜 )を見ながら聞くという方法があります。 最初は、 途中で付いていけなくなり、 一度脱落したら二度と這い上がれなくなります。 しかし、 慣れるにしたがって、 視野が広がり音楽の世界が深まってきます。 最初は、 ベートーベンの第9の第4楽章あたりをお勧めします。
  さて、 第9のスコアを見ていて気付くことは、 他の楽器がニ短調( フラット1つ )のときも、 二長調( シャープ2つ )のときも、 トランペットやホルンのパートは、 常にハ長調またはイ短調( シャープ も フラットも付かない )ということです。 しかし、 よく見ると、 トランペットのパートには Trombe in D と書かれており、 二短調のときには、 ミ = E の音 と ラ = A の音 は一度も登場しません。 もし、 これらの音が登場するのであれば、 これらの音には ♭ が付いているはずです。

        音名 と 階名
           音名 : ハニホヘトイロハ ( T U V W X Y Z T ) の ドイツ語訳
                    C D E F G A B C
           階名 : ドレミファソラシド の イタリア語訳
                    Do Re Mi Fa Sol La Si Do
            音名 は「 絶対音高 」であり、 階名 は「 相対音高 」です。
            イ長調では、 相対音高 の ド( Do )は、 絶対音高 の イ( A ) に
           なります。


        二長調の曲 を 和声的ニ短調 の曲に変える 裏ワザ

            D E ♯F  G  A  B ♯C D
                      
            ド  レ  ミ  ファ  ソ  ラ  シ  ド
                      
            ド  レ ♭ミ ファ ソ ♭ラ  シ  ド
                      
            D  E  F  G  A  ♭B ♯C D
                      
            ラ  シ  ド  レ  ミ  ファ ♯ソ ラ

                        コメント : 和声的短調 は 自然短調 に 比べて、
                              ソ が半音高くなっています。

  もちろん、 トランペットのパートも、 ハ長調のように書いてあっても、 実際はニ短調であったり二長調であったりなのです。 昔は、 トランペットは、 ハ長調( またはイ短調 )用のトランペット、 ト長調( またはホ短調 )用のトランペット、 へ長調( またはニ短調 )用のトランペット、 ・ ・ ・ ・  とたくさんあったのです。 ハ長調( またはイ短調 )用以外のトランペットのような、 楽譜どおりに弾いたときに楽譜とは異なる「 調 」を奏でる楽器を「 移調楽器 」といいます。 しかし、 現在のトランペットのほとんどは、 ブラスバンドで用いられるB♭管トランペット( 移調楽器 )か、 オーケストラで用いられるC管トランペットかです。 B♭管トランペットで、 ピアノの楽譜を演奏するときには、 楽譜のオタマジャクシよりも半線だけ上の仮想のオタマジャクシを弾かなくては、 ピアノ伴奏に合いません。 C管トランペットでは楽譜通りに弾けばその音が出ます。
  ベートーベンが第9にD管トランペットを用いている理由は、 第9が二短調や二長調を主とする曲だからです。 D管トランペットで、 ハ長調の楽譜の音階を弾くと二長調( シャープ2つ )になります。 つまり、 次のような対応になっています。

                   ド  レ  ミ ファ ソ ラ  シ  ド
         ピアノ :     C  D  E  F  G  A  B  C   ( ハ長調 )
       D管トランペット :  D E ♯F  G  A  B ♯C D   ( ニ長調 )

  ピアノで弾けば E = ミ の音が、 D管トランペットでは ♯F = ミ の音になり、 ピアノで弾けば A = ラ の音が、 D管トランペットでは B = ラ の音になります。 D管トランペットのニ長調を二短調に変えるには、 次の対応を参照にします。

       D E ♯F G  A  B  ♯C D ( ニ長調 )
       D E  F  G  A ♭B ♯C D ( 和声的ニ短調 )

  すると、 ♯F = ミ の音 と B = ラ の音 を半音下げたらいいことがわかります。 第9の楽譜で、 二短調のときに、 もしも、 ミ = E の音 と ラ = A の音 が登場するのであれば、 これらの音には ♭ が付いているはずであると言ったのは、 ここに由来します。

  現代では第9の演奏のほとんどは、 C管トランペットで行われていますが、「 ニ長調の曲は、 D管のほうがパッセージやハイトーンが楽で、 音程も安定し、 しかも、 明るく柔らかい音色を出すことが出来るから。」と言って、 ベートーベンの7番や9番は、 D管トランペットを好んで用いる演奏者もいます。