ジャニベコフ効果
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2023.09.25


 等速自転座標系では、遠心力という見かけの力が発生します。このことが、無重力空間でも回転している物質にジャイロ効果が発生する原因になっています。

  図1: 十字交差棒
   

 画面に垂直方向にz軸を取ります。画面の手前から奥に向かう方向を正とします。

 I: 十字交差棒のx軸回りの慣性モーメント
 I: 十字交差棒のy軸回りの慣性モーメント
 I: 十字交差棒のz軸回りの慣性モーメント
 I = I + I
 I < I < I

 x軸のC→D方向に角速度を与えると、CD軸は自転的回転をし、AB軸は公転的回転をします。
 この回転に対して、もしy軸方向とz軸方向に等しい大きさの角速度を与えたとすると、ジャイロ効果によりz軸方向とy軸方向に新たな角速度が生じますが、I < I のため、十字交差棒には主にy軸方向の角速度が加わるようになります。

 まず初めに、十字交差棒を少しだけ傾け、x軸の正方向に角速度 を与えます。
  図2
   

 実際は、十字交差棒の傾きは微々たるものなのですが、図ではオーバーに表現しています。
 最初は十字交差棒はx軸を中心に回転しますが、その後、CD軸が、AからBを見つめる観察者にとって時計回りに180度公転して 遅い → 速い → 遅い と変化します。その間AB軸は、最初はxy平面上を反時計回りに回転しますが、途中から時計回りになって最後は下図のように最初と反対の傾きになります。

  図3
   

 これまでの運動を角速度 を持つ 等速自転座標系で見てみる と、AB軸は全く回転してなくて( 少しx軸方向に振動しますが )、CD軸が180度公転して元の位置を入れ替えたことになります。
 この後は、十字交差棒は今までと反対の運動を行い最初の状態に戻ります。この運動の繰り返しを静止座標系の人が観察すると「ジャニベコフ効果」となります。


 これから「ジャニベコフ効果」のしくみを説明します。 図2を見てください。
 最初は、点A〜Dはx座標値を一定に保ったままx軸を中心に回転します。
 ここで、点Dに作用する 遠心力 に注目します。点Dの位置ベクトルを とし、点Dには m kg の質量があるとすると、等速自転座標系では、点Dには で表される遠心力が作用します。向きはy軸の正の方向です。
                  ※ 演算子 の意味は  です。
 この遠心力はz軸の負の方向を向くトルク( 力のモーメント )を形成します。点Cに作用する遠心力についても同様に考えると、z軸の負の方向を向くトルク( 力のモーメント )を形成することが分かります。
 そしてこれらのトルクは十字交差棒をxy平面上を反時計回りに回転させるように働きますが、慣性モーメント(I)が比較的大きいために少ない回転しかしません。一方、これらのトルクによって生じるこのz軸の負の方向を向いた新たな角速度は、 に対して外積的に作用し、y軸の負の方向の角速度を産生します。ジャイロ効果です。それは点Dをまずz軸の負の方向へと回転させます。点Dのx座標値が 0 になったときには、遠心力はz軸の負の方向を向いており、それによって生じるトルクは 0 になっています。
 新たに加わったこのy軸の負の方向の角速度は、 に対して外積的に作用し、z軸の正の方向の角速度を産生します。これは、十字交差棒をxy平面上を時計回りに回転させるように働くので、十字交差棒は途中からxy平面上を時計回りに回転するようになります。
 以上のCD軸とAB軸との協調運動により、図2から図3へと移っていきます。その後は、これまでの運動を巻き戻すようにして、図3から図2へと移っていきます。この周期的な十字交差棒の運動が「ジャニベコフ効果」です。「ジャニベコフ効果」の原理は「多重ジャイロ効果」であり、「ジャニベコフ効果」は広い意味での姿勢制御運動であります。