鏡のパラドックス
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2017.11.20


 「 鏡1枚では自分の姿を左右反転できても上下反転できない。 何故か?」という質問は、 質問自体が間違っています。「 鏡1枚では自分の姿は反転できない。 何故か?」という質問が正しいのです。 鏡に映る自分の姿は他人から観察される自分の姿と左右反転の関係になっていますが、 だからといって鏡が自分の姿を左右反転していることにはなりません。 自分の観察において2つの物が左右反転の関係になっていて初めて、 2つの物は左右反転の関係になっているということができるのです。 太陽による自分の影を見ながら左手を動かしてください。 鏡の前に立って左手を動かしてみてください。 どちらも向かって左側の手が動きますね。 もし鏡の中の自分の像が実物の他人だったら、 向かって左側は相手の右手になります。 そこで鏡像は左右反転していると勘違いしてしまうのですが、 比べる相手が違うのです。 自分の実物と鏡の中の自分とを比べなければならないのです。 自分の左手は顔よりも左側にあります。 鏡の中の自分の左手も顔よりも向かって左側にあります。 これは左右反転とは言いません。

  でも、 ちょっと待ってください。 鏡の中の自分はこっちを向いています。 太陽によってできる影は向こうを向いているから反転してないけど、 鏡の中の自分はこっちを向いているだから左右反転しているのではないですか?

  確かにこっちを向いています。 でも、 本当に左右反転しているのならば、 頭が上側にあり、 かつ、 左手が向かって右側になければなりません。 でも、 鏡の中の自分の左手は向かって左側にあります。 また、 本当に上下反転しているのならば、 左手が向かって左側にあり、 かつ、 頭が下側になければなません。 でも、 鏡の中の自分の頭は上側にあります。 ですから、 一見反転しているように思えて本当は左右反転も上下反転もしていないのです。

  鏡の中の自分を左右反転した姿( 写真に写った自分の姿 )にするには、 鏡が2枚必要です。 下図のように2枚の鏡を左右に置いて一方の鏡を見れば鏡の中の自分は左右反転しています。

   
   ※ 左側の鏡の中には、 左右反転した右斜め前から見た自分を見つけることができ、
     右側の鏡の中には、 左右反転した左斜め前から見た自分を見つけることができます。

  「 鏡1枚で画像を左右反転するのは簡単ですが、 上下反転するにはどうすればいいでしょうか?」 という質問の答えは、「 画像の書かれた用紙を両手で持って鏡の前に立ち、 鉄棒の前回りのように水平な直線を軸にして用紙を180度自転させ上下にひっくり返せばいい。」です。 次の答えも正解です。「 画像を鏡に映る壁に貼り付け、 壁と鏡の間に壁の方を向いて立ち、 その後に股のぞきして鏡を見る。」これらの方法を 反転方法1とします。 まだ他にも方法があります。 下図のようにします。 この方法を 反転方法2 とします。

        

  反転方法2は鏡が画像を反転させるのですが、 反転方法1は鏡が画像を反転させるのではなく観察者が画像を反転しています。 画像を反転させるのに鏡は必須ではありません。 画像をガラス板に描いて、 ガラス板をひっくり返して表から見たり裏から見たりすれば左右反転や上下反転させることができます。 では、 鏡が画像を反転させるのではないのなら、 鏡はいったい何をしているのでしょう? それは、前後反転させているのです。


  2枚の鏡を合わせるといろんなことができます。 下図のように鏡を上下に合わせると、 用紙に描かれた画像は平面的に180度回転して見えます。 180度平面的回転は左右反転と上下反転との合成です。 これを理解するには、 画像がガラス板に書かれており、 鏡の前にセットされたときには既に左右反転が行われているものとします。 そして、 ガラス板が次第に上の鏡に近づいていって、 鏡に当たると90度時計回り ( 図でいうと時計回りです ) に空間的回転をして下の鏡に向かい、 下の鏡に当たると90度時計回りに空間的回転をして観察者に向かいます。 このガラス板を観察者が見ると、 最初に観察者がガラス板の表側から画像を見たものを平面的に180度回転して見たものになります。 2枚の鏡がそれぞれにガラス板を90度ずつ時計回りに空間的回転をさせたということは、 合わせて180度空間的回転をさせたということで、 画像を上下反転させたことになります。