姿見鏡は前後反転だけさせる
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2021.01.04_____

 まず、前後反転のイメージづくりをしましょう。
 1列になってまっすぐに行進をしている人達がいます。あなたは先頭にたっています。
「全体止まれ」の合図の後、あなただけが回れ右をします。
すると、あなたが相対的に他の人達を前後反転させたことになります。ついでに左右反転もさせていますが。

 では実験に移りましょう。
 容量 350 ml のアルミ缶を1個ずつ両手で持って両耳に接してから洗面台の鏡の前に立ってください。
次に、右腕を鏡の方に向かって伸展させ、その次に、左腕を鏡の方に向かってその半分だけ伸展させます。
すると、左手で持っているアルミ缶の方が大きく見えます。
そこで、鏡に映っている像(鏡像)に目を移すと、反対に右手で持っているアルミ缶の方が大きく見えます。
あなたにとっても鏡にとっても、大きく見える方が近くにあることになります。

 右手で持ったアルミ缶を耳から遠ざけて鏡に近づけると、その鏡像は鏡の奥からこちらに近づいてきます。
鏡は物体を前後方向に反転させて映しているからです。

 あなたの観察座標系を少しだけ平行移動して鏡の面の上に乗せてみましょう。
 洗面台の鏡に黒色のビニールテープを貼ります。十字に貼ります。水平軸を x 軸とし、垂直軸を z 軸とします。
鏡の表面から鏡に映っている風景の奥に向かう方向を y 軸とします。それは、鏡の前に立つあなたから十字の交点に向かう方向です。
すると、 y 軸の負の領域が実物の領域で、 y 軸の正の領域が鏡像の領域になります。
y = 0 の平面、つまり x z 平面について、実物と鏡像は反転の関係になっています。
それは、あなたからすると前後反転の関係になります。
あなたにとって、鏡は物質を前後反転して映し出しますが、上下反転したり左右反転したりすることなく映し出します。

 鏡の反転について比較しなければならないのは、「自分による実像の世界の観察」と「自分による鏡像の世界の観察」とです。自分の観察座標系の中で両者を比較すると、鏡は物質を前後反転だけして映し出し、上下反転や左右反転をしないことが分かります。しかし、鏡像は前後反転しているので、「鏡の主」が実物の自分や自分の前にある物や自分の背後にある物を見たような像を映し出しています。そこでついつい私達は、自分と対面している「鏡の主」になったような気になって鏡を見てしまいます。すると「鏡に映った自分の姿は左右反転しているぞ。」という勘違いに陥ってしまうのです。。

 自分が持つ座標系について考えましょう。左右方向を x 軸、下上方向を z 軸、後前方向を y 軸 とします。振り向くということは z 軸を中心に 180°自転するということです。ということは、x 軸 と y 軸 の方向をそれぞれ反対方向にしているということです。したがって、振り向くという行為は、観察する物たちを相対的に 前後反転 かつ 左右反転 していることになります。鏡を背にして立ちます。見える風景を記憶します。振り向きます。鏡に映っている風景を見ます。するとそれは左右反転のみしています。なぜなら、まずあなたが風景を相対的に前後反転かつ左右反転させ、続いて鏡が前後反転させたからです

 私たちは3方向のいずれかの軸を中心にして自転することによって、観察する物たちを相対的に反転させることができますが、そのときに1方向だけを相対的に反転することはできず必ず2方向の相対的反転になります。たとえば、前後反転と上下反転。しかし、鏡の場合は前後反転の1方向のみの反転になります。私たちは1方向だけの反転に不慣れなので、鏡は前後反転と共に左右反転させているのだと勘違いするのです。