宙返りのメカニズム
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2012.06.01


  ヒトの回転は軟体の回転の範疇である。 まず、 水泳のターンのときの水中での回転を考えてみよう。 水泳は、 水を蹴ったりかいたりして、 進みたい方向と反対方向に移動させて、 その反作用で体を移動させている。 したがって、 ターンの時は、 体の回転方向と反対に水を回転させているのだろうか? どうもそうではなさそうである。
  次に、 体操競技の「 ゆか 」の演技の回転を考えて見よう。 空気はあまり関係なさそうだ。 なぜなら宇宙遊泳でも回転できるからだ。 胸が向いている方への回転を前転といい、 その反対方向の回転を後転( バック転 )といい、 体の縦中心軸を軸とする回転をひねり回転という。 フィギアスケートではひねり回転のことを単に回転と言っている。 人の重心は、 第2仙骨の少し前方にあって、 臍より少し低い位置にある。 前転や後転はこの重心を中心とする回転であると考えられる。

  空中のひねり回転で有名なのはネコである。 背部を地面に向けて落とされたネコは、 まず上肢を屈曲してから上半身をひねって顔を下に向けるそうだ。 そして次に、 上肢を伸展させると共に下肢を屈曲して素早く下半身をひねって上半身のひねり回転に追いつかせたら、 下肢を伸展しながら上下肢同時に着地するそうである。 ひねり回転のない状態から、 空中で体のひねり回転を作り出すには、 上半身をひねってから下半身をひねらなければならないようだ。 上半身のひねり回転は、 脊椎のひねりにより達成され、 下半身のひねりは、 骨盤に対する股関節の内旋外旋により達成される。 下肢が地面に接触している場合のひねり回転の典型はゴルフスウィングである。 それは空中でのひねり回転と反対で、 常に下半身が先で上半身が後からついてくる。

         ちなみに、「 捻じる 」とは、 棒状物質の両端に反対方向の力のモーメント
         を加えることです。


  空中での前転や後転も、 ひねり回転と同様、 上半身が先で下半身が後のようだ。
  空中前転( 前宙返り )は、 拳上した肘関節を振り下ろしながら( 肩関節の屈曲を戻しながら )上半身を前屈( 屈曲 )させて、 体を重心を中点に前転させ始めた後に、 膝関節を屈曲して、 上半身に引きずられて前転する下半身の回転速度( 角速度 )を増したら、 その直後に、 膝関節を伸展しながら角速度を減らして、 安定した着地を迎える。
  バック宙( 後宙返り )は、 肘関節を振り上げながら( 肩関節を屈曲しながら )上半身を後屈( 伸展 )させて、 体を重心を中点に後転させ始めた後に、 膝関節と股関節を屈曲して、 上半身に引きずられて後転する下半身の回転速度( 角速度 )を増したら、 その直後に、 膝関節と股関節を伸展しながら角速度を減らして、 安定した着地を迎える。
  最初のアクションである、 肩関節の屈曲の深さの変更 と 上半身の屈曲伸展 は、 力のモーメントを作用させる動作であり、 中間のアクションである膝や股関節の屈曲は、 力のモーメントを作用させる動作であるとともに、 角速度を増加させる動作である。 角速度の増加は、「 軟体のフリーな回転における角運動量不変の法則 」の下での慣性モーメントの減少によるものである。

    「 角運動量 」や「 慣性モーメント 」について調べたい方は、
       大学生のため物理学 > 剛体力学 > 剛体の回転運動 をご覧ください。