ニュートンの運動の第1法則は、 慣性の法則です。 私たちの 健康 についてもこの慣性の法則があてはまります。 恒常性( ホメオスタシス )とよばれるシステムです。 これは、 自律神経系 と 内分泌系( ホルモン系 )が担当しています。 自律神経は、 それぞれ反対向きの 交感神経 と 副交感神経 から成ります。 体内では、 様々な化学反応が一定のリズムで行われており、 また、 暑と寒 や 乾と湿 が二極分裂しないよう、 平均化されるようになっていて、 それは、 病気の原因( 病因 )の作用を受けない限り、 その平均化された状態が保たれています。 しかし、 いったん病原菌感染などが起こると、 生体のリズムは狂ってきて、 体内に、 暑の所 と 寒の所 と 乾の所 と 湿の所 の偏りが生じてきます。 このとき恒常性にも慣性質量のような度合いがあり、 生体内の平衡状態の偏りの起こりやすさがあり、 また、 一度起きてしまった偏りの元に戻しにくさがあります。 しかし、 この恒常性の力を信用しきれず、 強力な薬を使って、 早急に無理やり、 寒や湿の方向へ持っていこうとすると、 寒の所と湿の所が悪化して、 さらに生体のリズムが狂い、 弊害が起こってしまうことがあります。
生命とは、 生命の営み と 子孫づくり をする物質です。 生命の営みとは、 生体内( 内界 )と 生体外 ( 外界 ) とのエネルギーや物質のやりとりのことです。 生命を関数器に例えます。 外界から何かが内界へインプットされ、 内界から何かを外界へアウトプットします。 インプットされるものは、 酸素、 水、 栄養素 の3つです。 まず、酸素を含んだ空気と栄養素を含んだ食物を、 肺や胃腸という袋の中に閉じ込め、 その中から、 酸素、 水、 栄養素 を体内へと吸収します。 吸収の終わったカスは、 袋から再び外へと出されます。 しかし、 アウトプットされるものは、 このカスではありません。 なぜならカスは、 体内には入らずにずっと外界に存在したままだからです。 生物の体には、 袋や穴がたくさんありますが、 表面にあいている穴から、 生物を傷つけないように細い針金を入れていって、 針金が入っていく所は、 まだ体の外なのです。 アウトプットされるものの正解は、 二酸化炭素 と 水 です。 生命の関数器のしくみは、「 生物学的呼吸 」です。 これは「 光合成 」と反対方向の化学反応で、 酸素や栄養素が持っている化学的エネルギー が 熱エネルギー や 力学的エネルギー に変換されます。 このエネルギーを用いて、 生物は外界に働きかけ食物を得るわけですが、 ヒトが行うこの行為のことを「 労働 」と言います。
ニュートンの運動の第3法則は、 作用反作用の法則です。 私たちの健康についてもこの作用反作用の法則があてはまります。 病因( 例えば、 侵入してきた病原細菌 )による作用に対抗する 抵抗力 が、 反作用に相当します。 抵抗力は 自然治癒力 とも言われます。 この抵抗力こそ病気の治療の主力であり、 最も注目しなければならないものなのです。
私たちの体には抵抗力が備わっていて、 絶えず病因と戦っています。 それは、 病因 と 抵抗力 の シーソー です。 シーソーはゆらいでいます。 抵抗力のほうが下になっているときは、 健康のレベル が高くなっているときです。
病気の反対は健康ではありません。 病気の反対は元気です。 健康は、 病気から元気すべてを含みます。 健康は天気に似ています。「 今日はいいお天気ですね。」といいます。 いい天気に相当するのが元気です。
抵抗力には、 次のようなものがあります。
免疫力
再生力
恒常性
体力
精神力
適応力
病因には、 次のようなものがあります。
病原生物 ウィルス など
異物 ( 異とは、 自分の体の成分ではないという意味です。) 花粉 など
虚血 ( 局所的に血液循環が悪くなっていることです。)
エネルギー 熱エネルギー など
使用頻度 ( 使いすぎ や 使わなさすぎ も病気の原因になります。)
精神的ストレス
遺伝
この 病因 と 抵抗力 がシーソーの上に乗っており、 これらの力のモーメントが絶えず変動していますので、 シーソーは絶えず揺れ動いています。 抵抗力の大きさは、 日頃の睡眠や栄養や運動などにより変動します。 そして忘れてはならないのがもう1つ。 シーソーを動かしている要素がもう1つあります。 それは、 シーソーの支点に相当するものであり、 支点は絶えず右にずれたり左にずれたりしています。 それは、 環境 です。 病因、 抵抗力、 環境 は「 健康の3要素 」と言われます。 この3要素は決してバラバラなものではなく、 作用・反作用のような関係 や 比例の関係などの、 さまざまな相互的関連を持っています。
病気の診断には、 6つの手順があります。 その1番目は、 時間 を明らかにすることです。 いつはじまったのか? 急性か慢性か? 2番目は、 場所 を明らかにすることです。 場所は、 臓器ごとに区分されています。 生命を維持する5つの臓器の名称と機能を列挙しておきます。
脳 : 神経系・内分泌系の中枢 精神活動 など
心 : 血液循環のための ポンプ
肺 : ガス交換
肝 : 栄養合成 と 解毒
腎 : 血液浄化
診断手順の3番目は、 病態 を明らかにすることです。 病態は、 炎症、 変性、 機能障害 の構成比で決まります。 変形性膝関節症は、 この 病態の3基底 の構成比がだいたい等しくなっています。 慢性肝炎は、 炎症が主体の病気ですが、 進行して肝硬変に移行していくと、 変性 や 機能障害 の比率が増してきます。 変性には、 線維化、癌化、壊死( えし: 細胞の死 )などがあります。
診断手順の4番目は、 病因 を同定することです。 ここまで来ますと、 必然と 病名 が付きます。 例えば、 今朝、 心臓に発症した、 虚血が病因の、 壊死 と ポンプ機能障害 から成る 病態 の疾患には、「 急性心筋梗塞 」という病名が付きます。 梗塞とは、 血管の閉塞によって虚血状態になったために起こる細胞の死のことです。
病名がついたからといって、 診断を途中で放棄してはいけません。 診断手順の5番目は、 抵抗力 の評価です。 それぞれの抵抗力の強弱を判定しなければなりません。 そして診断手順の最後は、 患者の 環境 の評価です。 衣 食 住 休 遊 働 学 育 養 組 のうち、 どれが健康のレベルをダウンさせるような要因になっているのか、 また、 どれが健康のレベルをアップさせる要因となりうるのかの判定です。
以上の6つの手順を踏んで得られた診断は、 次の治療方針づくりへと続いていきます。
( 付 録 )
光合成 と 生物学的呼吸 とは互いに逆向きの化学反応です。
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光合成の化学反応式 :

生物学的呼吸の化学反応式 :

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