現代貨幣理論( MMT )
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2025.06.17
昔々、倍尾という王様が治める倍尾王国がありました。倍尾王国の国民はみんな働き者で一日も休みません。倍尾王国には貨幣はなく、国民は自分が狩りをして得た獲物や自分が作った物を他人の物と交換して生活していました。ただし、王様だけは国民が狩りをして得た獲物や国民の作った物の一部をもらって生活していました。ある日、王様は国民Aさんにこう言いました。「 1年後に他人が 10 時間 働いて作った物をお前にやるから、今お前が 10 時間 働いて作った物を私にくれ。そうしたら、この色紙を差し上げよう。これは私のサイン入色紙で、ここに 10 時間 と書いてある。これは他人が 10 時間 働いて作った物と交換できる色紙なのだ。ただし、1年後にはこの色紙は色あせて効力を失ってしまう。」この色紙はというと、あっと言う間に、AさんからBさんに渡り、BさんからCさんに渡り、・・・・ でした。なぜなら、この色紙は交換相手があっという間に見つかったからです。1年後、色紙を持っているXさんは国王から他人が 10 時間 働いて作った物をもらいました。
以上の物語は現代貨幣理論( MMT )に基づく信用創造( 通貨誕生 )と1年後の通貨消滅の物語です。国民Aさんが王様から交換権利書( 色紙 )を与えられた瞬間、通貨が誕生したのです。交換権利書は貨幣です。交換権利書とは、その交換権利書 と 交換権利書に記載された金額と等価の商品 との交換を常にすることができるという権利を持った紙です。
今は金本位制ではなく、今の紙幣は金と交換できない不換紙幣です。主な通貨( 流通貨幣 )は、現金( 中央銀行券と鋳貨 )と 銀行預金 です。MMT の考え方では、民間銀行の民間( 企業や家庭 )への貸付( 融資 )によって民間の借金が増えることが 信用創造( 貨幣誕生 )であるとします。なぜなら、その時に、民間が口座を開設している民間銀行の民間の預金通帳には金額が入力されますが、銀行預金は通貨なので通貨が増えたことになるからです。また、国債発行によって政府の民間銀行に対する負債が生じた後に日銀が民間銀行の国債を買い取って実質的な政府の負債が消滅することで 貨幣創造 が起こります。なぜなら、その間に政府は自分の懐を傷めずに公共事業を民間企業に行わせるため、公共事業委託企業が口座を開設している民間銀行の企業の預金通帳に金額を入力するからです。この時に政府はその民間銀行の日銀口座預金にも同じ金額を入力します。その民間銀行の増加負債と増加資産の合計を0にするためです。
「 貨幣とは交換手段として信用を受けた負債である。」というのが MMT の考え方の基本です。貨幣の信用は、政府がその貨幣を税金の手段に指定することによって生まれるとします。そして、通貨量アップには民間の民間銀行への負債が必要であり、そのためには、民間が生産供給能力を持っていると民間銀行から信用されることが必要になります。
MMT の考え方では、政府は国債を発行することによって、貨幣は極端なインフレが発生しない範囲ではいくらでも作り出せるので、国庫歳入の基本は国債発行であり、税金ではないとします。そして、徴税は、調税( 経済をうまく回すために徴税量を変動させること )によって需要量を調節するためのものであるとします。また、財政赤字の原因の裏面である国庫歳入不足の解消法として、国債発行以外に、調税があります。財政赤字とは、政府の民間への負債 = 民間の政府への資産 のことですので、民間の資産が多いところから税金を多く徴収すればいいのです。国庫歳入を増大させる方法としては、それら以外にも、起爆剤としての 公共投資 や 減税 によって需要を増大させて好況を作り出し、結果として税金をたくさん得るという方法もあります。