力が先か 運動が先か?
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2017.06.24


 「 移動する物質に作用する力は、 速さを変える。」という常識が通用しないことがあります。 と言うと、「 ああそうだ。 等速円運動の原動力となる向心力は、 速度の向きを変化させるが速度の大きさ( 速さ )は変化させないもんな。」と考えられると思います。 確かに、 一定の速さで公転している地球には、 絶えず太陽からの重力が作用し続けています。
  ではここで問題です。 もし、 太陽と地球との間に重力が働かなくて両者が相対的に静止していたとき、 突然、 重力が働くようになったらどうなるか? 答えは「 地球は公転せずに太陽に衝突する。」です。 そこには必ず加速という速さの変化があります。
  そうです、 公転の最初には、 公転中心に向かって垂直な方向へ地球は移動していなければならないのです。 ハンマー投げの一番最初は、 自分の方に引き寄せる力を加えるのではありません。 また、 止まっているブランコ乗って、 ジャンプするときのように両脚で板を蹴っても、 ブランコの振り子運動は始まりません。

  さて、 重力が向心力になっている等速円運動とは異なる等速円運動があります。 その1例は、 円錐振り子による等速円運動です。 円錐振り子の重りが運動する前は、 ただの紐でぶら下げられた重りです。 ぶら下げられたとは、 紐が重りに作用する張力が太陽が地球に作用する重力( 重りには遠心力や月などの重力も作用していますが無視します。 )と吊り合って落下しないような状態にされているということです。 この重りが円錐振り子運動をしている時には、 張力の水平方向成分が向心力となっていて、 張力の大きさは重りにかかる重力よりも大きくなっています。 それは、 遠心力が加わっているからではありません。 遠心力とは、 向心力と吊り合うみかけの力です。 つまり、 円錐振り子の場合は、 力が運動を作るんじゃなくて、 運動が力を作っているのです。

                


  以上、 申し上げたように、 惑星の公転運動以外の円運動 や 振り子運動 では、「 最初に向心力ありき 」ではないのです。 物質の移動が直線的である場合は「 最初に力があって、 それが物質の速さを変える。」でいいのですが、 物質の移動が曲線的である場合はそう単純にはいきません。 物質が曲線軌道を通って移動しているときは、その接線方向とそれに垂直な法線方向に運動を分解して考える必要があるのです。 接線方向の運動については常識通りでいいのですが、 法線方向の運動については、「 最初に速度があって、 それらが向心力を決める。」なのです。 特に、 抗力や張力の関与する拘束された曲線軌道 のときは速度を忘れてはいけません。

  接線方向の加速度は移動の速さの変化の度合いを表し、 法線方向の加速度は移動の方向の変化の度合いを表すものになっています。