防音 と 残響
音楽と物理学 へ戻る
ばいおりんの日常的物理学文集 へ戻る
2012.05.21


 「 遮音 」はアパートのお隣さんとの人間関係を悪くしないために考慮しなければならないことであり、「 吸音 」は良いコンサートホールを作るために考慮しなければならないことです。

  高い音ほど壁の透過性が悪いので、 低音ほどお隣に聞こえやすいです。 また、 壁を単位面積あたりくりぬいた時の質量が大きいほど音の透過性が悪いので、 壁が薄いほどお隣に聞こえやすいです。「 遮音 」の程度は、 次の透過損失で表されます。

    

  壁の厚さ または 周波数 が2倍になると、 透過損失は次のようになります。
    
  BからAを引くと、  です。 ということは、 1オクターブ上げると隣に漏れる音を だけ低くすることができ、 壁の厚みを2倍にすると隣に漏れる音を だけ低くすることができるということです。

  一般的に厚さ のコンクリートの壁の透過損失は です。 壁の厚さを にすると透過損失は になります。 しかしそれよりも効率のいい方法があります。 厚さ のコンクリートを薄い空気の層を挟んで2つ並べると、 透過損失は になります。 これだと、 以上の音を出さない限り隣に音が漏れることはないということです。 この原理を「 防音における重ね得の法則 」と私は言っています。 これに似たのが「 防寒における重ね着の法則 」であり、 これと逆なのが「 架橋における重ね損の法則 」です。


  吸音力のあるものは、 もちろん遮音力もありますので、 防音の目的で使用されることもあります。 しかし、 吸音は、 室内での過剰な残響を防止する目的で使用するのが正統です。 高音を吸収するのは、 空気の入る小さな穴をたくさん持った物で、 たとえば布を何枚も重ねたものです。 低音を吸収するのは口の狭い壺です。 ですから、 口の狭い壺を石垣のように並べて積んでそこに布を重ねたカーテンをかけると、 吸音力の大きい壁を作ることができます。 残響時間は吸音力に反比例し、 部屋の体積に比例します。 残響時間は短ければ短いほど良いというものではありません。 アナウンススタジオは残響時間が短いのが好ましく、 教会音楽は残響時間が比較的長いほうが好ましいとされています。 歌を歌ったりバイオリンを弾いたりする時も、 ある程度残響があった方が上手く歌っているような錯覚に陥って悦に入ります。 ただし、 バイオリンを風呂場に持ち込んではいけませんぞ。 湿気を吸って傷んでしまいます。