漢方では、 病態のことを「 証 」といいます。 証は次のような切り口から成り立ちます。
気血水 の体内循環
陰陽( 冷温 )方向 と 乾湿方向 からなる平面での、 中心からのズレ
虚実 という、 病邪 と 抵抗力 との量的力関係で決まる 自律神経系・内分泌系状態
表裏 という、 病気が起こっている体内の深さ
虚とは、 抵抗力が弱すぎることによって起こっている病気の状態で、 補剤で治します。 実とは、 病邪が強すぎることによって起こっている病気の状態で、 瀉剤で治します。
裏とは、 体の表面から遠い体の奥のことです。 体の表面とは、 体の内界が外界と接触しているところで、 上皮で覆われているところです。 胃の中だって、 胃カメラで見えるところは、 体の表面になります。 ちなみに、 癌の別名は悪性上皮性腫瘍ですから、 癌は体の表面から発生します。 病気が裏の方に移ると急性疾患が慢性化したことになります。
気 または 血 または 水 の恒常的循環状態からの逸脱によって起こる疾患があります。 気とは、 気力の気で、 先天の気 と 後天の気 があります。 後天の気には、 呼吸器から少量に内界に入ってくる気と、 消化器から多量に内界に入ってくる気とがあります。 先天の気は腎に宿り、 その欠乏は老衰です。 後天の気の総合的循環量低下は、 気虚 といわれ、 体力 や 精神力 や 免疫力 などの抵抗力が低下した状態です。 気の局所的循環量低下( うっ滞 )は、 気鬱 といわれ、 抑うつ的気分障害を表します。 気が重力に逆らって逆流するのは 気逆 とか 気の上衝 といわれ、 のぼせ、 イライラなどの自律神経障害を表します。 気の異常による疾患には、 気の消化器からの取り込みを良くする人参や、 気のうっ滞をとる厚朴や蘇陽( シソの葉 )や、 気の上衝を改善する桂枝などの生薬が処方されます。
経験主義的な漢方による医療の流れは、 次のようになっています。
証を明らめる
処方
証を明らめる
処方

民主主義的な西洋医学による医療の流れは、 次のようになっています。
診断
治療方針づくり
治療
診断
治療方針づくり 
治療方針づくり と 治療 とが分かれている理由は、 2つあります。 その1つは、 漢方では、証が明らかになれば必然的に処方が決まりますので、 証を明らめることが医療従事者の最大事になりますが、 西洋医学では、 治療のバリエーションが多いので、 診断だけで医療従事者の仕事が終わらないからです。 2つ目の理由は、 治療方針づくりは医療従事者が行うけれども、 治療は患者が主体になって行われるからです。 患者が主体になる理由は、 治療を行う( 病因と戦う )力の主体は、 患者に備わっている自然治癒力( 抵抗力 )だからです。 医療従事者の提供する薬や手術は、 再生力や免疫力などの抵抗力があってこそ効果を発起します。 したがって、 それはパワーサポートメントにすぎません。 医療従事者が提供する医療サービスは、 例えて言うならば、 スポーツ選手のコーチングであったりトレーニングであったり栄養管理であったり、 そんなものです。
※ 参照: 人間の体のしくみ > その他 > 漢方の基本的な考え方
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