らしばんしんでの夜月
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2012.02.07


  農業指導家でもあった宮沢賢治が書いた数多くの童話の中に、 物理学に関係するものがあります。 それは、 1921年( 大正10年 )に書かれた「 月夜のでんしんばしら 」( 下から読んでも ・ ・ ・ ではありません )という童話です。 月夜に線路脇を南に向かって歩いていた少年が、 線路に並走する 配電線、 通信線、 高圧送電線 の電信柱たちが、 北に向かって線路に沿って3列になり、 軍歌を合唱しながら軍隊行進するのを目撃し、 それらを指揮する電気総長( 電気の精霊 )と会話をするお話です。 当時、 電線は「 はりがね 」と言われていました。 その目的は、 主に、 灯りのエネルギー源の配給 と 通信 でした。 軍隊とは組織された兵士の集団のことです。

  電気総長は、 自分は「 勢力不滅の法則 」と「 熱力学第二法則 」を知っていると言います。「 熱力学第二法則 」とは「 エントロピー増大の法則 」のことです。「 勢力不滅の法則 」とは「 熱力学第一法則 」のことです。 そして、「 熱力学第一法則 」とは「 エネルギー保存の法則 」のことです。 電燈( 灯り )が普及する前は、 イワシ油 や ひまし油( ヒマの種が原料 )や 菜種油 などの油を燃やして明りをとっていたので、「 発電所では、 油を大量に燃やして電気を作っているのだろう。」という洒落(しゃれ)も登場します。

  このお話は、 汽車が北の方からやって来て、 作者の幻想体験が終わり、 現実に戻ります。 軍歌は、 静かな風が電信柱や電線によって後方に交互に反対巻きになって連なる小さな渦を形成し、 空気圧の微妙な変動を起こして発生する音波、 つまり、「 カルマンの渦 」による「 うなり 」だったのです。 宮沢賢治は「 月夜のでんしんばしらの軍歌 」という童謡を作っています。 そして、 その詩はすべて、 この童話の中にちりばめられています。 その1番を紹介します。

      ドッテテ ドッテテ ドッテテ ド
      でんしんばしら の ぐんたい は
      はやさ せかいに たぐひなし
      ドッテテ ドッテテ ドッテテ ド
      でんしんばしら の ぐんたい は
      きりつ せかいに ならびなし