車輪のトリック
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2012.08.15


  列車の中が舞台となる走り続ける密室映画は、 登場人物の数が少なくて、 音楽で言うと室内楽のアンサンブルのように、 微妙な感情とリズム感と和音の魅力に溢れた作品になります。 その上、 映画では、 監督は演奏者の配置を自由に変えることができるのです。 最近見た2004年作の邦画「 約三十の嘘 」は格別でした。 下準備された心理戦のトリックが次第に明らかになっていきます。 トリックそのものは単純です。 この映画のロケは、 倉庫の中に作られたスプリングによって揺れる列車のセットを使って行われました。 実力派の俳優陣に加え、 全編に流れるクレージーケンバンドのミュージック や オープニングの渋谷氏のグラフィックアニメーション も素敵でした。


  さて、 列車の車輪のレールと接触する面は踏面と言われますが、 踏面はレールの車輪の内側から外側に向かって直径が次第に小さくなっていくように斜めに切られています。 その理由は、 カーブの時にレールの外側が内側よりもレール幅だけ曲率半径が長くなるために、 車輪が1回転したときに、 レールの外側の方が少し長く転がらなければならないからです。 列車がカーブするときは遠心力が働いて、 レールの外側は車輪の内側がレールに近づき、 レールの内側は車輪の内側がレールから離れます。 ということは、 カーブの外側の車輪は実質直径がやや大きくなり、 カーブの内側の車輪は実質直径が短くなります。 こうして、 車輪が1回転したとき、 カーブの外側の車輪の方が内側の車輪に比べて長い距離転がるようになっているのです。