資本論は全部で3巻ありますが、 マルクス( 1818 〜 1883年 )が書いたのは1巻だけです。 1巻は 1867年 に初めて発刊されました。 2巻3巻は、 マルクスの死後に友人のエンゲルスによって書かれました。 資本論とは資本主義の欠点の暴露本であると思われている方が多いかと存じますが、 いやいや、 もっと奥深い科学的な書物です。 資本論の中でマルクスが成し遂げたことは、 経済学の基礎を完成させたということです。 また、 資本論の中でマルクスが挑戦したことは、 唯物弁証法の経済学への適応だと思います。
(1) 労働価値学説
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資本主義経済は、搾取が気づかれにくい仕組みになっている。
資本家のもうけとは資本家による労働者からの搾取である。
商品は 使用価値 と 交換価値 を持つ。
商品生産が行われているのが資本主義である。
商品生産に必要な労働の3要素 : 労働力 労働対象 ( 材料 ) 労働手段 ( 道具 )
生産手段 = 労働対象 + 労働手段
労働力も商品となっているのが資本主義である。
労働者は労働力を生産して資本家に売っている。
同一の商品としてくくられるのは、 使用価値が同一のものである商品である。
交換価値とは、 商品を生産するのに必要な社会的平均的抽象的労働時間である。
労働力の交換価値は、 生活手段の交換価値 と 労働能力維持向上のために必要な商品の交換価値 と 労働力を売ることのできない家族が生活や労働能力を得るための勉強をするのに必要な商品の交換価値 の和にほぼ等しい。 生活手段とは、 人間が健康で文化的な生活をするための使用価値を持つ商品である。
労働力の売り手と買い手にはそれぞれに平等な売買の権利が与えられている。
商品をどのように消費しようとそれは所有者の勝手である。
商品の消費とは新たな商品の生産である。
歴史的に蓄積された使用価値を富という。
資本とは、 自己増殖する交換価値の塊 である。
資本は 貨幣資本 と 商品資本 の2つの形態を変化しながら増殖する。
新たな富は労働のみが作る。
生産手段と交換するための貨幣資本を 不変資本 という。
生産手段が消費され新たな商品が誕生するとき、 交換価値はそのまま移行する。
労働力と交換するための貨幣資本を 可変資本 という。
労働力が消費され新たな商品が誕生するとき、 労働力の持つ交換価値は消滅する。
そのときに、 社会的平均的抽象的労働によって新たな交換価値が生まれる。
その新たに生れた交換価値は、 消失される労働力の交換価値よりも大きい。
その差が資本家のもうけの源泉となる。 これを 剰余価値 という。
資本家は他の資本家との競争のため、 より多くの剰余価値を得ようとする。
労働強化によって得られる平均以上の剰余価値を 絶対的剰余価値 という。
生産性向上によって得られる平均以上の剰余価値を 特別剰余価値 という。
社会全体の生産性向上によって生活手段の交換価値が低下すると労働力の交換価値は下がる。
そのことによって資本家にとって増大する剰余価値を 相対的剰余価値 という。
剰余価値 の 労働力の交換価値 に対する割合を 搾取率 という。
社会的平均的搾取率は増大する。 その理由として、 まず、 労働力供給過剰により雇われ続けるためには長時間労働に耐えなければならないこと、 次に、 社会的に生産性が向上するので生活手段の交換価値が低下する、 つまり労働力の交換価値が低下すること、 さらに、 半失業者( 産業予備軍 )が増大して労働者に必要な平均的生活手段の使用価値が低下するために、 労働力の交換価値が低下することが挙げられる。
商品の中から交換価値だけを持つ特殊なものが生まれた。 それが貨幣 ( 金 ) である。
商品の売買とは、貨幣を媒介とする物々交換である。 貨幣は流通する。
価格とは、その商品と交換される貨幣の量である。
価格を決定する3つの基礎的要素 : 交換価値 需要供給 流通貨幣量
賃金とは、 労働力の価格のことであり、 労働者が労働力と交換して手に入れた貨幣の量のことである。
賃金とは、 資本家が労働力と交換に労働者に渡した貨幣資本の可変資本部分である。
需要供給関係を無視すれば、 賃金の交換価値は労働力の交換価値に等しい。
賃金は労働力の交換価値と等しい交換価値を持つ貨幣の量よりも少ない場合が多い。
それは、 労働力が供給過剰になっているからである。
労働力が供給過剰の理由 : 農民の労働者化 主婦の労働者化 企業の倒産 生産の機械化 など
資本主義的生産様式における支配的な富 ( その交換価値的側面を 資本 という ) は、「 巨大なる商品集積 」として現れる。 個々の商品はその構成基本形態である。
商品が含んでいる2つの価値の対立、 それは、「 具体的労働によって形成される使用価値 」と「 抽象的労働によって形成される交換価値 」との対立であるが、 この対立は、 まず「 社会的分業と商品交換 」を生み、 次に 「 商品流通と貨幣 」 を生み、 そして「 資本の回転と見えざる搾取 」を生んだ。
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社会的に富が蓄積するためには、 生産力がある程度大きくなり、 労働によって作られる富が、 労働するために必要となる富よりも大きくなければならない。
マニュファクチャー( 工場制手工業 )が誕生する以前から、 生産手段を持っている借地農業者や商人は労働者を雇って交換価値の増殖・蓄積を行っていた。 この蓄積が資本へと成長していったのである。
2重の意味で自由な労働者 とは、 封建制によって縛られていた土地から解放されて生産手段を失っており、 かつ、 封建的な宗教的身分的束縛から解放されて自らが搾取される相手を選ぶことができる人のことである。
一方の極に生産手段を持つ人間があり、 他方の極に自分の労働力以外に売るものを持たない人間があることは、 本源的蓄積の必要条件ではあるが十分条件ではない。 資本主義の黎明期には、 ブルジョアジー( 将来資本家になる中産階級 )は、 労働者の賃金を安くするため、 労働時間を延長するため、 国家権力を利用した。 このことにより本源的蓄積が可能となったのである。
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拡大再生産の本質は、 剰余価値を次回の資本の回転の投資資本の交換価値に追加することである。
資本家階級内で熾烈な生存競争が起こっている。
資本家は搾取率うんぬんを考えて行動しているのではない。
資本家が求めるのはより大きな利潤率である。( 理論的な交換価値 よりも 現実的な価格 )
利潤率とは、 価格で表される利益 の 価格で表される投資資本 に対する割合である。
資本は、 より大きな利潤率を求めて生産部門間や地域を移動する。
ということは、 資本家階級全体が労働者階級全体から搾取していることである。
過去の労働が現在の労働を支配する。 労働者たちは自分たちが働いて作り出したものによって再び雇われ搾取されている。 労働者は機械の付属物に成り下がり、 資本の増殖のための奴隷となっている。 人間疎外である。
資本の必要に応じてすぐに利用できる半失業者( 産業予備軍 )を抱えておくことは、 資本の増殖にとって不可欠のものである。
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各資本家がより大きな利潤率を求める結果、 不変資本の投資資本に対する割合が増える。
これを 資本の有機的組成の高度化 という。
そのことにより、 平均利潤率は低下する。
すると、 企業の大量倒産、 長期不況、 恐慌 などの経済現象が現れる。
すると、 半失業者( 産業予備軍 )は増大し、 賃金も低下する。
こうして、 労働者階級は次第に貧乏になっていく。 抜け出せない貧困化である。
ますます、 富は勝ち残った資本家たちに集中していき、 2つの階級の格差が増大する。
富の増大と分配における弁証法的発展過程において、 資本制的私的所有の終わりを告げる鐘が鳴る。 収奪者たちの私有財産が収奪される。 個人の生産手段に基づく分散的な私的所有は、 生産力の発展法則により資本主義的私的所有へと変化していったが、 今後は資本主義的私的所有と社会的生産との矛盾がさらに増大していき、 資本主義的私的所有は生産力の発展の足かせになっていき、 ついには新しい個人的所有への変換が起こるであろう。 新しい個人的所有とは、 土地や労働によって生産される生産手段の共同占有に基づく個人的所有である。
ケインズは、 マルクスが明らかにした資本主義の窮乏化法則は国家の介入によって克服できることを示しました。 国債発行 と 公共事業 によって雇用促進をすれば、 長期不況 や 恐慌 などの経済現象を防ぐことができることを示したのです。 また、 金融政策の必要性も示しました。 平均利子率 を 平均利潤率 よりも低くすれば景気が回復することを示したのです。 また彼は、 累進課税による失業労働者の負担軽減も提案しています。
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