時を刻む用紙は左へと流れ出る
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2024.11.01


 天然温泉かけ流しの湯が、湯舟の底から湧き出して湯面をこんもりと持ち上げた後、湯舟の縁から四方八方へと流れ出て行くように、時は今この瞬間に現れて過去へ過去へと流れていきます。

 心電図記録用紙は、心電図計測器の中から外へと吐き出され、その後、左へ左へと送り出されていきます。心電図記録用紙には、上下に移動する加熱接触点によって一筆書きの曲線が刻まれます。私たちはその用紙を手に取って、その心電図波形を左から右へと見ていきます。用紙の一番左側の最も過去が刻まれた所から始めて、次第に右側の今に近い過去が刻まれた所へと心電図を読み取っていきます。

 もしも心電図記録用紙が右へ右へと送り出されていくのであれば、そこに描かれる心電図波形は鏡像になっていることでしょう。これを普通に読み取っていくと、今に近い過去が刻まれた所から始めて右側の最も過去が刻まれた所へと進むことになります。あたかも逆再生ビデオを見ているようです。

 加熱接触点を今の自分、心電図波形上の各点を過去の自分であると見ると、時が今湧き出して過去へ過去へと流れていく実感が湧いてきます。