回転走行 と 転倒回転移動 との違い
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2024.05.11


 「 回転走行 」や「 転倒回転移動 」は私が勝手に付けた名前です。この2つの違いを説明します。

 まずは「回転走行」です。昭和30年代の洗濯機を思い浮かべてください。現在のような回転ドラム式ではなく、スクリュー式です。右上にはローラー式の半自動絞り器が付いています。絞り器はゴムで覆われた二つのローラーが上下に接触しており、下のローラーにはハンドルが付いています。洗い上がった洗濯物を洗濯機の中からローラーに挟み込んでハンドルを時計方向に回転させると、水が絞られて、のしイカ状になった洗濯物が外に送り出されてきます。洗濯物が洗濯機の中から外へと移動する仕組みは、車が走るのと同じです。ただ、車が走る時は道が移動するのではなく車自身が移動するのですが、これは相対的なもので本質は同じ現象です。水平な道での後輪駆動自転車の後輪の加速は、回転剛体の接触物質に対する相対的移動で、「 回転走行 」になります。ちなみに、ゲームセンターにあるエアーホッケーの上に板を浮かせて、その上で板の質量と同じ質量のラジコン車を走行させると、両方とも反対方向に同じ速さで移動します。

 一方「 転倒回転移動 」の例は、坂道にそっと置かれたボールが自転しながら移動したり、水平面に寝かせた鉄製の缶のそばに大きくて強力な磁石を持っていくと缶が自転しながら移動したり、後輪駆動の自転車の前輪の軸が前に押されながら前輪が自転することです。

 「 回転走行 」と「 転倒回転移動 」の違いについてもっと深く考察してみましょう。回転走行は 力のモーメント( トルク ) が原動力であり、転倒回転移動は 転倒 が原動力です。転倒とは、剛体の重心が支点の存在する位置の場のポテンシャルより出来るだけ大きい差を持って低い位置に移動しようとすることです。もちろん転倒の際にも力のモーメントは働きます。「 転倒回転移動 」とは連続転倒状態のことです。連続転倒状態は、万有引力による惑星の公転運動が連続落下状態であるのに似ています。少しずつポイントが変位するために無限ループ ( 回帰的永久循環 ) に入るのです。

 「 回転走行 」には「 転倒回転移動 」が同居しています。なぜなら、転がり出した物質には「 剛体の移動の慣性 」があるからです。移動する物質には瞬間的に静止している物質と道路との接触点からすれば、重心に慣性力が作用しています。「 剛体の移動の慣性 」による「 転倒回転移動 」のことを、私は「 慣性転倒回転移動 」と言っています。「 転倒回転移動 」にも「 慣性転倒回転移動 」が同居しています。


 回転走行している物質 が 接触している物質 に対して及ぼす「 回転摩擦力 」の向きは移動方向と逆です。一方、回転走行している物質に接触している物質 が 回転走行している物質 に対して及ぼす「 回転摩擦力 」の向きは、回転走行している物質の移動方向です。これらは作用反作用の関係にあります。

    
                    「 回転摩擦力 」は、私が自分勝手に作った言葉です。


 転倒回転移動している物質 が 接触している物質 に対して及ぼす「 転がり摩擦力 」の向きは、「 滑り摩擦力( 動摩擦力 )」の方向と同じで、物質の移動方向です。一方、転倒回転移動している物質に接触している物質 が 転倒回転移動している物質 に対して及ぼす「 転がり摩擦力 」の向きは、転がっている物質の移動方向の逆です。これらは作用反作用の関係にあります。「 転がり摩擦力 」の大きさは「 滑り摩擦力 」の大きさに比べて1万分の1とも言われています。

    


 滑っている物質 が 接触している物質 に対して及ぼす「 滑り摩擦力( 動摩擦力 )」の向きは移動方向です。一方、滑っている物質に接触している物質 が 滑っている物質 に対して及ぼす「 滑り摩擦力 」の向きは、滑っている物質の移動方向と逆です。これらは作用反作用の関係にあります。滑り摩擦 は 動摩擦 とも言われます。「 動摩擦力 」の大きさは「 最大静止摩擦力 」の大きさに比べて小さいです。