物価や為替レートの決まり方
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2012.09.13


  相対性理論では、 同じ物質でも、 観察する方の立場なのか、 観察される方の立場なのか、 今はどちらの立場にあるのかを明確にした上で、 考察していかなければなりません。 同様に、 為替レートにおける貨幣も、 貨幣としての立場にあるのか、 商品としての立場にあるのかを意識して考察していけば、 その交換比率が決まってくるしくみを理解することができます。

  さて、 商品には、 有形商品 と 無形商品 とがあります。 無形商品には、 散髪 や マッサージ などのサービス商品 や 労働力商品 があります。 商品を購入するということは、「 相手が所有している商品 」と「 自分が所有している商品と同じ価格を持つ貨幣 」とを交換するということです。 労働力商品と交換されるそれと同じ価格を持つ貨幣は、 賃金といわれます。

  商品の平均的な価格が下落することを、 デフレーションといいます。 デフレーションの本質は、「 貨幣量の商品量に対する相対的減少傾向 」で、 しかも商品量はさほど変動しませんので、「 貨幣量の減少 」が問題になってきます。 このときは、 貨幣1円と交換される商品の量が多くなる傾向になっていますので、 次第に物価が安くなっているということになります。 物価が安くなっているということは、 貨幣の価値が増加しているということです。

  労働力も商品ですから、 デフレーションのときは物価と共に賃金も下落します。 したがって、 事業者がデフレーションを理由にボーナスを削減して賃下げをすることは正当な権利の行使なのです。 ( ただし、 事業者が、 デフレーション以外の理由によって利潤が減少した場合に賃下げを行うのは、 倒産を予防するための現実的な対策ですが、 正当な権利の行使ではありません。 ただし、 正当でない権利の行使イコール違法行為ではありません。)

  物価の指標になるのが、「 消費者物価指数 」と「 」です。 後者は、 実質国民総生産に対する名目国民総生産の比率です。 これらのこの10年間の推移を見てみますと、 若干低下はしているものの、 ほとんど横ばいです。 とういうことは、 この10年間は、 インフレーションでもデフレーションでもないということです。「 平成デフレーション 」と言われていますが、 その言葉は「 平成不況 」に換えるべきだと考えます。

  円ドル交換の為替レートも、 商品の売買の延長線上にあります。「 ドル売り円買い 」とは、「 相手が所有する円という商品 」と「 自分が所有するドルという貨幣 」とを交換することです。 為替レートにおける「 ドルという商品 」の使用価値は、「 米国の商品の購入 」という交換目的に始まったのですが、「 高金利のドル立て投資 」という投資的目的に変わり、 さらには「 将来的に、買った時に支払った円よりも多い円と交換することができる。 または、 その可能性を期待させてくれる。」という投機的なものに変化してきました。

  円高ドル安のときは、「 売られようとする円の量 」に対する「 買われようとする円の量 」の比率が次第に増加しています。 つまり、「 貨幣としての円の量 」に対する「 商品としての円の量 」の比率が次第に増加しています。 また、「 商品としてのドルの量 」に対する「 商品としての円の量 」の比率や、「 貨幣としての円の量 」に対する「 貨幣としてのドルの量 」の比率が、 次第に増加しています。

  物価にしろ為替レートにしろ、 それらは、「 市場に出回る商品の総量 」と「 市場に出回る貨幣の総量 」との比率により決まります。 為替レートは一般に行われている消費目的の商品貨幣交換ではなく投機目的の商品貨幣交換ですから、「 思惑 」が働くのは当然ですが、 それでもマクロ的に見ると、 円のドルによる価格表示は、「 商品としての円の量 」と「 貨幣としてのドルの量 」との比率によって決まります。

 2007年以降ずっと円高ドル安が続いています。 その主な原因は米国にあります。 米国のインフレーションによって「 市場に出回るドルの総量 」が増大し、 ドルの価値が低下したのです。 また、 米国の金融機関の破綻によってドル立て投資の不安感が増大しました。 日本では、 円高ドル安のために不況が続いています。 そこで、 円高ドル安を打開するためには、 期待できない米国のインフレーション終息を待つのではなくて、 米国並みのインフレーションを国内に作り出すことをしなければならないのですが、1929年の世界恐慌のようなインフレーションの副作用の懸念があり、 ジレンマに陥っています。 好況時には公定歩合を下げることによって比較的安全に簡単にインフレーションを作ることができるのですが、 遷延する不況下においては、 政府の発行する赤字国債を日本銀行が購入して抱え込むことでしか、 インフレーションを生みだすことが出来なくなってきているようなのです。 公定歩合は1980年には でピークでしたが、 現在では になっています。 日銀の国債抱え込みには危険性が潜んでいます。「 経済の自然治癒力 」が麻痺してしまって「 金融ストレス 」が蓄積されていきます。 太平洋巨大金融地震が起こらなければいいのですが。