体温に対して温度の低い物質ほど触ったときに冷たく感じます。それは、温度差が大きいほど、熱が手から物質に速く大量に移動するからです。
単位時間に単位面積あたりを伝わる熱量( Q J ) = 熱伝導率 × 温度勾配
しかし、冷たいと感じる感覚の程度は、温度差だけによるものではありません。同じ10℃の温度でも、ガラスに比べると金属のほうがずっと冷たく感じます。それは、金属の方がガラスに比べて圧倒的に熱伝導率が大きいからです。熱伝導率が大きいと、同じ温度差であっても、温度の高い方から低い方へと熱が移動するスピードが大きくなるからです。
熱伝導率とは、1 秒間あたり、1 m の距離あたり、1 ケルビンの温度差あたり、伝わる熱量のことで、熱伝導率の単位は次のようになっています。
W m
−1 K
−1 =→ J m
−1 s
−1 K
−1 =→ kg m s
−3 K
−1
凍ったペットボトルの中の炭酸水を解かすには、常温の空気中に置いておくよりも、空気よりも温度の低い水の中につける方がはるかに早く解けます。それは空気よりも水のほうが熱伝導率がはるかに大きいからです。
さらに、熱伝導に由らずに冷たいと感じる物質もあります。その代表は発熱時に額に当てる冷却シートです。それは、ジェルに含まれる水分が蒸発するときに蒸発熱( 気化熱 )によって額の温度を下げるのです。
気温の高い空気中において水に濡れた皮膚における冷たさは、空気の湿度によってまるっきり違います。たとえば、湿度の高いサウナでは冷たくはなくて逆に温かいのですが、空気は熱伝導率が低いのでさほど暑くはなくて皮膚も火傷をしません。一方、乾燥した高温の砂漠での水に濡れた皮膚における冷たさは半端ではありません。皮膚上の水の気化が激しいために熱が沢山奪われるからです。
物質 m kg の温度を T℃ 上昇させるために必要な熱量( Q J ):
Q = 熱容量 × 温度差
= 比熱 × 質量 × 温度差
= 比熱 × m × T
| |
比 熱 ( J / kg K ) |
熱伝導率 ( W / m K ) |
気 化 熱 ( J / kg ) |
| 空 気 |
1006 |
0.022 |
|
| 水 |
4200 |
0.59 |
2250 |
| エタノール |
2400 |
1800 |
393000 |
空気 と 水 と エタノール。一番暖めやすいのは空気で、一番暖めにくいのは水です。一番冷めやすいのは空気で、一番冷にくいのは水です。
室内プールは現在 無風で 気温 20℃ 湿度 50% です。水温 20℃ のプールに入るとしばらくは冷たいと感じ、プールから出てもしばらくは冷たいと感じます。その理由はなんでしょう?
空気よりも水の熱伝導が大きいために、同じ温度でも水のほうが、同じ温度にしようと速く熱を奪うので、プールに入る前と比べて体は冷たく感じるのです。
プールから上がると、皮膚の表面に付着した水が気体になっていきます。その気化熱が体から奪われるので、プールから上がる前と比べて体は冷たく感じるのです。
もし、エタノールのプールだったらどうなるでしょうか? プールに入ったときは冷たいと感じますが、水に比べるとその冷たさは軽いです。それは、水の熱伝導率がエタノールの熱伝導率よりも大きいからです。
エタノールのプールから上がると、皮膚の表面に付着したエタノールが一気に気化します。その気化熱が体から奪われるので、プールから上がる前と比べて体は非常に冷たく感じます。心停止の危険がありますので、よい子の皆さんは絶対に実験をしないでくださいね。