なんでサウナでは火傷しないの?
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2025.03.16
サウナの温度は、平均 80℃ 〜100℃ とのことです。 80℃ 〜100℃ の熱湯の中に入ると大やけどをしますが、サウナに入ってもやけどをしません。その理由について解説します。
1番目の理由は、汗の気化による皮膚からの熱エネルギーの吸収です。2番目の理由は、空気の層による熱伝達遅延効果です。3番目の理由は、分子密度の減少による熱伝達率の低下です。4番目の理由は、熱伝導率の異なる2物質の接触面の温度に関する法則です。
これから、2番目の理由について説明します。
熱エネルギーを皮膚に渡して温度が下がった空気が皮膚の周囲を覆います。いわゆる空気の層です。空気の層は周囲の熱い空気から熱エネルギーを渡されて再び温度が上がり、そして熱エネルギーを皮膚に渡します。これに要する時間は、皮膚が周囲の熱い空気から直接熱エネルギーを与えられるよりも長いのです。それは、空気は皮膚に比べて熱伝導率が小さいためです。したがって、サウナでは皮膚の温度はゆっくりと上昇します。
これから、3番目の理由について説明します。
1 s 間に人体に衝突する分子の数を n 個 とし、分子の平均質量を m kg とし、分子の平均衝突速度の大きさを v0 m/s とし、分子の平均衝突直後速度の大きさを v1 m/s とすると、1秒間当たりの熱伝達量は n × 1/2 × m × ( v02 − v12 ) に比例します。 v1 / v0 は ほぼ一定でありその値を e ( 0 < e < 1 ) とすると、1秒間当たりの熱伝達量は次のような式に比例することになります。
n × 1/2 × m × v02 × (1−e2)
温度は、系の外部との境界部分に衝突する原子や分子1個の平均の運動エネルギー量を反映します。したがって、1秒間当たりの熱伝達量は温度に比例し、衝突する分子の数に比例することが分かります。80℃ 〜100℃ のサウナの熱気 と 80℃ 〜100℃ の熱湯 とを比べると、系の外部との境界部分に衝突する原子や分子の運動エネルギー量は同じですが、衝突する分子の数が大幅に違います。熱湯のほうがサウナの熱気に比べて極端に多いのです。したがって、80℃ 〜100℃ のサウナの熱エネルギーは、80℃ 〜100℃ の熱湯の熱エネルギーに比べて、ゆっくりと皮膚に伝わってきます。
これから、4番目の理由について説明します。
熱伝導率の異なる2物質の接触面の温度は、温度の低い方の物質の温度に、温度差を熱伝導率の逆比配分した値を加えたものになるという法則があります。この法則は、接触面を単位時間あたりに通過する総熱エネルギー量は熱伝導率に温度勾配と面積をかけたものに等しいということと、接触面を単位時間あたりに通過する総熱エネルギー量が接触面に入る側と出る側とで等しくなっていることから導かれます。皮膚と空気の熱伝導率比はおよそ 20:1で、皮膚と水の熱伝導率比はおよそ1:1です。だから、サウナの熱気の中の皮膚表面の温度は体温に近く、熱湯中の皮膚表面の温度は体温と熱湯の温度の中間くらいになります。
※ 2つの温度が異なる物質が接触すると、熱エネルギーが温度の高い物質から低い物質へと
伝わり、最終的には、2つの物質の温度は等しくなります。
※ 参照:
大学生のための物理学 > 熱力学 > 温度と熱の違い
大学生のための物理学 > 熱力学 > 熱伝達率と熱伝導率