自己座標系を体得するための呪文
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2022.03.30____

 歯科を初診すると、まず全ての歯のレントゲンを撮ってもらった。全ての歯が重ならないよう簡単に撮れるのだ。そして、レントゲンの左下の歯を指さされ、「右の奥歯が虫歯になっていますね。」と言われた。思わず反対の左奥歯ではないかと思った。鏡で見ると左奥歯は向かって左側にあるし。でも医師が間違えるはずはない。レントゲンはわざわざ左右反転させて、対面している人のようにしてから見るのである。これは医師が患者のレントゲンを読影するときの方法なので、患者にレントゲンを見せて説明するときは、患者が自分の姿を鏡で見るのと同じように見えるよう、レントゲン読影のときとは左右反転して示した方がいいのではないかと思った。そういえば昔、患者に説明するときにシャーカステンにかけているレントゲン写真をわざわざひっくり返して( 左右反転かつ前後反転させて )いたドクターがいたことを思い出した。きっと彼はいつも患者の立場にたって仕事をしていたにちがいない。

 テレビを見ているとき「テレビの前側」は、自分に備わっている座標系からすると、「テレビの後ろ側」よりも後ろ側に位置しています。自分に備わっている座標系からすると、「テレビの後ろ側」の方が前側にあるのです。この呪文は、「テレビの後ろ側」の方が前側にあることを体得し、すれちがう人は自分にとっては次第に前に移動しているのではなく前から後ろへ向けて移動しているのだと自然に認識できるようにするためのものです。「どうぞ前の方の席が空いてますので、前に詰めて座ってください。」と講師が言ったとき、講師は聴講者の座標系の立場に立って言っているのであって、講師の座標系からすると「後ろ向きになっている席」の後ろの方に詰めて座るようにお願いしていることになります。

 上下軸を中心に物を180°回転させてから鏡に映すと、物は左右反転のみします。前後反転を2回すると元に戻るからです。