ソーダ水の中の貨物船
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2013.07.05
ソーダ水の中を 貨物船がとおる
小さなアワも 恋のように 消えていった
これは、 荒井由実の「 海を見ていた午後 」の歌詞の一部で、 横浜のカフェ&レストラン「 ドルフィン 」での光景です。 ではここで問題です。 ソーダ水の中を左から右へと横切っている貨物船は、 出船でしょうかそれとも入船でしょうか?
横浜から見える海は、 三浦半島の内側ですから東京湾の海です。 東京湾の貨物船の船着場は大井埠頭や青海コンテナ埠頭であり、 それは横浜からは北東の方角になります。 したがって、 肉眼で左から右へ移動している貨物船は出船になります。 そこで問題は、 水の入ったコップを通して見る景色が左右反転していないかどうかです。 ここでヒントをさしあげましょう。 水で溢れんばかりのコップの口を手の平で塞いでコップを持ち上げて横倒しにして目の前に持ってくると、 景色は上下反転します。
というわけで、 答えは「 入船 」でした。 凸レンズを通して景色を見ると上下左右反転します。 双眼鏡で見る景色が反転していないのは、 光が凸レンズを通る前に2つのプリズムの中を通されて上下左右反転するからです。 双眼鏡に用いられている2対の組み合わせプリズムは、 プリズムの面に垂直な方向の光以外はすべて反射されてプリズムを出入りすることができないようになっています。
「 港に船が入る。港から船が出る。」と言うのと「 プリズムに光が入る。プリズムから光が出る。」と言うのとは、「 出入り 」の仕方が異なります。 前者は「 袋の中の空間への出入り 」であり、 後者は「 剛体への貫通的あるいは透過的な出入り 」です。「 ソーダ水の中の貨物船 」は、 貨物船によって跳ね返された太陽の光がコップの中のソーダ水を透過して私たちの網膜に届いたものです。 その光も恋のように私たちの大脳を活性化させてから消えてしまいます。