(1) エネルギー保存の法則 と 飽和
-
自転車をこがずに坂道を走らせますと、 次第に加速します。 運動エネルギーは増加しますが、 その分だけ位置エネルギーが減少します。 平坦な道で空気や道の抵抗に抵抗して自転車をこぐと等速運動します。 太陽光のエネルギーが転換されて生まれた食物の化学エネルギー と 酸素の持つ化学エネルギー とが合成されて ヒトの体内の化学エネルギーへと変換されたものは、 ヒトが自転車をこぐという動作で、 直接に熱エネルギーになったり、 あるいは、 空気や道の抵抗に抵抗する力を発揮した後に熱エネルギーになったりします。 しかし、 この場合も、 全体の系のエネルギーの量に変わりはありません。 エネルギー保存の法則です。
水の中に食塩を入れてかき混ぜると溶解しますが、 同じことをどんどん繰り返しますと、 飽和してそれ以上食塩は水に溶解しなくなります。
商品経済社会における社会的な富の量の指標である総資本は、 前者のエネルギー保存の法則とは異なる、「 自己増殖の法則 」を持っています。 しかし、 後者の「 飽和 」のような原理も持っていて、 永遠に増加するものではなく、 いずれある平衡状態に落ち着くのではないかと思います。
-
およそ社会の存続のためには、 どんな社会であろうとも、 生産のための物 と 消費生活のための物 がバランスを保って生産され続けなければなりません。 商品経済社会では、 これらの物が商品という形態を取って、 商品交換の法則に従うことによって、 このことが実現されています。 そして、 バランスが保たれながら、 次第に資本 ( 富 ) が増大していくようなしくみになっています。 ここでは、 貿易のない閉じられた経済社会でのモデルを考えましょう。
いま、 社会全体の生産部門を、 以下の2つの大きなグループに分けることにします。
グループ : 事業者が労働者に生産をさせる時に消費する材料や道具を生産する部門
グループ : 労働者や事業主が生活のために消費する商品を生産する部門そして、 すべての資本は同じ周期で回転 ( 再生産 ) しているものと仮定します。
資本が
回 回転した時、
グループの総資本金を
、
グループの総資本金を
とします。 また、 平均利潤率を
とし、 平均利潤率は、 時間的にも一定であると仮定します。 これらを次の式たちで表します。
のうち、 次回 ( 

) 回目の資本の回転の時、 拡大再生産ぶんとして組み入れられる部分の内の、 材料や道具の費用になるぶんを
、 雇用のための費用になるぶんを
としますと、 次のようになります。
同様にして、 次のようになります。

ゆえに、


また、


ここで、 次の ア )と イ )を言うことができます。
ア )
のうち、
と
は、 次回 ( 

) 回目の資本の回転の時に労働者に手渡される部分であり、 これは結局、 労働者が生活するためのものになる。 また、
は、 事業者が生活するための部分である。 だから結局は、 これら3つの部分は生活のために消費される商品と交換されることになる。また一方、
のうち、
と
は、 次回 ( 

) 回目の資本の回転の時に消費される材料や道具になる商品と交換される部分である。 ゆえに、 次の式が成り立つ。
イ )
回目の資本の回転の直前には、 この社会には、
の材料や道具になる商品が存在していた。 資本が回転するとこれらは消滅して、
回目の資本の回転の直後には、 この社会には
の材料や道具になる商品が新しく誕生した。 だから、
の材料や道具になる商品が増加したことになる。 このぶんは、 次回 ( 

) 回目の資本の回転に当然参加する。 だから
グループでは、 そのぶんの資本を拡大再生産ぶんとして次回の資本の回転に組み入れることになる。 ゆえに、 次の式が成り立つ。
経済学と物理学 へ戻る