囲碁の宇宙へ
天文学と物理学 へ戻る
ばいおりんの日常的物理学文集 へ戻る
2011.07.11


  碁盤のマス目の幅は、 縦幅 、横幅 で、 縦幅のほうが若干広くなっている。 それは、 碁盤を斜め上から見るので、 縦幅がやや狭く見えるためである。 碁石の大きさは白石が直径 、 黒石が直径 で、 黒石のほうが若干大きくなっている。 それは、 錯覚により、 白色の物はやや大きく見えるためである。


  囲碁のルールはこうだ。
  黒石だけ白石だけを持つ2人の競技者が、 交互に1個ずつ石を 19×19 の格子の交点に置いていき、 石で囲んだ交点の数の多さを競うゲームである。 縦または横がちょうど隣同士に置かれた同じ色の石たちは、 合体したと見なされる。 相手の合体した石たちを外側と内側から自分の石たちで完全に囲んで、 それ以上に合体することを不可能にしたときには、 囲んだ石たちを取り除くことができ、 その石の数だけ仮想の交点を囲んだと見なされる。
  石は空いている交点ならばどこに置いてもいいのだが、 例外が2つある。 その1つは「 相手の石を取り除けず、 かつ、 置いた石によって合体する石たちが、 相手の石から完全に囲われる場合 」である。 したがって、 相手の石から完全に囲われないためには、 合体した石たちが2か所以上でそれぞれ1つ以上の交点を囲うことである。 例外の2つ目は「 石を置くことによって、 自分が1つ前に石を置いて変化させた直後の状況に戻る場合 」である。 これを認めると、 未来永劫の繰り返しになってしまう。
  ゲームの終了は、「 これ以上石を置いても結局は相手に取り除かれてしまうことになる。」とお互いがそう認めた時である。 その時点で、 仮想の交点を含めて相手よりも多くの交点を囲った方が勝ちになる。 ただし、 ゲームの最初に石を置く方が若干有利であり、 統計的に交点5個分くらいなのでハンディが付く。 囲った交点の数の差は、 勝ちの価値に関係ない。


  囲碁のルールからすると、 囲碁とは、 自分の石が囲われる前に相手の石を囲んで、 相手の石を碁盤から排除しながら、 効率良く交点を囲める碁盤の4隅から囲んでいくゲームであると言える。 しかし、 囲碁の基本戦略は、 相手の石を無理に囲おうとせず、自分の石を無理に囲われまいとせず、 交点を無理に囲おうとせず、 相手に交点を無理に囲われまいとせず、 多数の局面から成っている碁盤全体を見ながら、 自分の石たちは合体し、 相手の石たちは切断し、 相手の石を囲うようなふりをしながら交点を囲い、 自分の着手が次の相手の手を否応なしに決定するよう、 先手先手で石を置いていき、 ゲームの黄昏時になってから、 細かな損得の差し引き勘定をしていくことだという。


  日本の囲碁の神様といわれる本因坊道策との勝負に負けた安井算哲( 渋川春海 )は、 囲碁の道を捨て、 天文学者として、 中国から輸入していた暦よりもすぐれた日本独自の暦を作り、 後世に名を残す。 時は1670年、 江戸城中。 算哲の2敗で迎えたカド番の第3局、 先番算哲の初手は碁盤のド真ん中。 驚いた道策。 幼少より星を見ながら宇宙に思いを馳せていた算哲は、 囲碁とは宇宙であり、 頭上の天中にその真理が秘められているとの境地に達したのである。 しかし、 本局も結局道策の勝利に終わる。 その後、 碁盤の真ん中の交点は「 天元 」と名付けられた。


  盤面上に果てしなく広がる宇宙に置かれた1石の妙手は、 ひときわ重たく見えるだろう。 その周辺の格子模様は、 あたかも石に吸い寄せられて窪んでいるかのような曲線をかもしだしているのかもしれない。