持ち送りの原理
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2016.12.05


  1 〜 5 の5枚のトランプカードを用意してください。 まず 1 のカードの短い方の辺が机の端に重なるようにして置きます。 次に2のカードの 8分の1 が机上からはみ出すようにして 1 のカードの上にずらして重ねます。 その次に同様にして3のカードを2のカードに対して 6分の1 ずらして重ねます。 そのまた次に4のカードを3のカードに対して 4分の1 ずらして重ねます。 最後に5のカードを4のカードに対して 2分の1 ずらして重ねます。 転倒しそうになりますがきちんとやればバランスを保ちます。 このとき5のカードは完全に机上でない空間に存在します。 驚異のバランスです。 すべてのカードを同じ割合でずらしてもこんなことはできません。

       

  この積み上げ方は、土台になるカードよりも上になるカードたちの全体の重心が土台になるカードの端になるように積み上げる方法です。本当にそうなっているかどうか、上から順にみていきましょう。

  まず、 土台の4のカードに対する5のカードです。 これは自明ですね。
  次に、 土台の3のカードに対する4と5のカードです。 4と5のカードの全体の重心は4のカードの端から 4分の1 の位置です。4のカードは3のカードに対して 4分の1 ずれています。 したがって、 4と5のカードの全体の重心は土台の3のカードのちょうど端になっています。
  その次に、 土台の2のカードに対する3と4と5のカードです。 3と4と5のカードの全体の重心は、 4と5のカードの全体の重心と3のカードの重心とのトルク ( トルクは回転軸からの距離と力の積で表される ) のつり合いより求められます。 3のカード上の3と4と5のカードの全体の重心から4と5のカードの全体の重心が存在する端までの距離を 1 とすると、 3のカード上の3と4と5のカードの全体の重心から3のカードの重心が存在する中央までの距離は2になっています。 したがって、 3と4と5のカードの全体の重心は3のカードの端から 6分の1 の位置になっています。 3のカードは2のカードに対して 6分の1 ずれています。 したがって、 3と4と5のカードの全体の重心は土台の2のカードのちょうど端になっています。

  その次に、 土台の 1 のカードに対する2と3と4と5のカードです。 2と3と4と5のカードの全体の重心は、 3と4と5のカードの全体の重心と2のカードの重心とのトルク ( トルクは回転軸からの距離と力の積で表される ) のつり合いより求められます。 2のカード上の2と3と4と5のカードの全体の重心から3と4と5のカードの全体の重心が存在する端までの距離を 1 とすると、 2のカード上の2と3と4と5のカードの全体の重心から2のカードの重心が存在する中央までの距離は3になっています。 したがって、 2と3と4と5のカードの全体の重心は2のカードの端から 8分の1 の位置になっています。 2のカードは 1 のカードに対して 8分の1 ずれています。 したがって、 2と3と4と5のカードの全体の重心は土台の 1 のカードのちょうど端になっています。

  そういうわけで、 重心は必ずカードの外側には存在しないことになるので、 転倒することなく驚異のバランスが保てるのです。
    
上の式より、 5のカードは完全に机からはみ出していることが解ります。

  同様のことを 13枚 のトランプカードで行うとどうなるでしょうか? 同様のことを 13枚 のトランプカードで行うということは、 2のカードは 1 のカードに対して 24分の1 ずらして重ねることになります。 そして、 KのカードはQのカードに対して 2分の1 ずらして重ねることになります。 図で言うと、上に上にトランプを積んでいくのではなくて、一番下へ下へとトランプを入れ込んでいくのです
    
上の式より、 Kのカードは完全に机からカードの縦の長さの半分以上はみ出していることが解ります。

  この原理を私は 「 持ち送りの原理 」 と言っています。 これは、 薄板を重ねて家の軒を作る時などに応用できそうですね。

  次の式から、カードを持ち送りの原理で無数に積み上げると無限に伸びていくことが分かります。
    
                

           ※ 参照: 数理論 > 平方数の数列の和( バーゼル問題を含む )の(2)
                ばいおりんの日常的物理学文集 > 錯覚と物理学 > 歪転倒