私たちは、Aさん、B君、C君 の3人がテーブルを囲んで話しているのを、隣のテーブルから観察しています。
Aさんは次の表を2人に見せ、自分の誕生日が 〇印 を付けた中にあることを伝えました。
| 1日 | 2日 | 3日 | 4日 | 5日 | 6日 | 7日 | |
| 1月 | 〇 | 〇 | |||||
| 2月 | 〇 | 〇 | |||||
| 3月 | 〇 | 〇 | |||||
| 4月 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
| 5月 | 〇 | 〇 |
次に、AさんはB君の耳元でこっそり何かつぶやいたかと思うと、今度はC君の耳元でこっそりとつぶやきました。
それから、Aさんはこう言いました。
「 私は今、B君には私の生まれた月を伝え、C君には私の生まれた日を伝えたよ。 そこで私の誕生日が分かったら、分かり次第だまって手を挙げてね。」
すると、約3分間の沈黙後にC君が手を挙げました。すると間もなくB君も手を挙げました。
はたして、Aさんの誕生日はいつなのでしょうか?
B君はAさんが何月生まれかを知っていて、C君はAさんが何日生まれかを知っていて、私たちはそれらのことを知りません。この表と彼らのリアクションのみで、本当にAさんの誕生日が分かるのでしょうか? 考えていきましょう。
まず、私たちはC君がすぐに手を挙げないのを見て、Aさんの誕生日が5日と6日と7日でないことを理解します。この時点でB君もそのことは認識しているはずです。すると今度は、私たちはB君がなかなか手を挙げないのを見て、Aさんの誕生日が1月と2月と5月でないことを理解します。この時点でC君もそのことは理解しているはずです。したがって、私たちは次の範囲だけで考えればよくなりました。
| 1日 | 2日 | 3日 | 4日 | |
| 3月 | 〇 | 〇 | ||
| 4月 | 〇 | 〇 | 〇 |
すると、C君がAさんの誕生日がいつなのか分かって手を挙げるのですが、このことによって、まず、B君と私たちはAさんの誕生日が1日でないことを理解します。すると、B君がAさんの誕生日がいつなのか分かって手を挙げるのですが、このことによって、まず、私たちはAさんの誕生日が4月でないことを理解します。すると、私たちはAさんの誕生日がいつなのか分かります。それは 3月3日 です。
では、Aさんの誕生日が分かったところで、今度はB君とC君の立場になって、最初からもう一度考えてみましょう。
まず、B君には Aさんの誕生日が 3月1日 か 3月3日 のどちらかであるという情報が与えられ、C君には Aさんの誕生日が 1月3日 か 3月3日 のどちらかであるという情報が与えられます。したがって、彼らの思いは次のようになります。
Aさんの生まれた月を知っているB君の思い :
Aさんの誕生日は 3月1日 か 3月3日 のどちらかである。
C君は 「 1日 」 または 「 3日 」 と聞かされている。
したがって、C君が候補に上げているAさんの誕生日は次の2パターンだ。
3月1日 か 4月1日
1月3日 か 3月3日
| 1日 | 3日 | |
| 1月 | 〇 | |
| 3月 | 〇 | 〇 |
| 4月 | 〇 |
僕がすぐに手を挙げないことによって、C君はAさんの生まれた月が1月と4月ではないことに気づいて誕生日が分かって手を挙げるはずだ。
でも、なかなかC君は手を挙げない。ということは、今の考え方は間違っているということだ。そこで、Aさんによって提示された表に注目しよう。C君がすぐに手を挙げないのを見て、私はAさんの誕生日が5日と6日と7日でないことを確認するのであるが、C君は「私がAさんの誕生日が5日と6日と7日でないことを確認した。」と考えるはずだ。そして、それでも私が手を挙げないのを見て、C君はAさんの誕生日が3月または4月であるところまでたどり着くということだ。
あっ、ついにC君が手を挙げた。ということは1日ではないということだから、3日だ。僕もAさんの誕生日が分かった。
Aさんの誕生日は 1月3日 か 3月3日 のどちらかである。
B君は 「 1月 」 または 「 3月 」 と聞かされている。
したがって、B君が候補に上げているAさんの誕生日は次の2パターンだ。
1月3日 か 1月7日
3月1日 か 3月3日
| 1日 | 3日 | 7日 | |
| 1月 | 〇 | 〇 | |
| 3月 | 〇 | 〇 |
僕がすぐに手を挙げないことによって、B君はAさんの生まれた日が1日と7日ではないことに気づいて誕生日が分かって手を挙げるはずだ。
でも、なかなかB君は手を挙げない。ということは、今の考え方は間違っているということだ。そこで、Aさんによって提示された表に注目しよう。僕がすぐに手を挙げないのを見て、B君はAさんの誕生日が5日と6日と7日でないことを確認するはずだ。それでもB君が手を挙げないのはAさんの誕生日が1月ではないということだ。ということは、Aさんの誕生日は3月3日だ。
Aさんの誕生日を、 B君、C君、そして私たちのそれぞれがどのようにして推理していったのか? まずそれぞれに異なる情報があって、その上にみんなに共通する情報とそれに対する他人のリアクションという新たな情報が加わり、さらにまたそれに対する他人のリアクションという新たな情報が加わって情報量が増えていき、真相にたどりつくわけですが、人によってその推理内容が微妙に異なることは興味深いと思います。私たちはそれぞれに自分の世界を持っていて、それが情報でつなげられながら自分の世界が動かされているんだなと思います。縁起( 依他起性 )というものが少し解ったような気がしました。私たちの脳は常に情報を「 分別 」によって自分勝手な色づけをしていますが、「 第三者的情報( 他人が観察したことをそれに他人の分別が加わって伝わってきた情報 )」 は 「 当事者的情報 」 以上に私たちを迷わしているんじゃないかと思います。
あっ! 余計なことを言ったみたいです。それはさておき、上記の問題によく似た問題があります。それは、九九表の数当てゲームです。
CさんがA君とB君に九九表を見せて言います。「この中に書かれてある2桁の数を1つ私は心に決めています。それがどの数かを2人に当ててもらいます。」
答えは、64 です。
A君もB君もすぐに分かったと言わなかったので、Cさんの思っている数は 27 と 63 と 72 と 81 ではないことが分かります。
A君はこう考えたのです。「答えは 63 または 64 である。もし 63 ならば、1の位の数が3の2桁の数は 63 だけだから、B君は即座に分かったというだろう。B君が分からないということは、64 だ。」
B君はこう考えました。「答えは 14 または 24 または 54 または 64 である。もし、Cさんが私に3とか7とかの数を教えてくれてたのだったら、私はすぐにCさんの思っている数が分かるのだが。私がすぐに分かったと言わないことを見て、A君はCさんの思っている数が 27 と 63 でないことは分かっただろう。30秒後にA君が分かったということは、27 と 63 を除いた九九表の中の 10の位の数が1または2または5または6の数の2桁の数の中で、10の位の数が同じであるものが存在しない数が1つだけあるはずだ。あった。それは 64 だ。」
前置きが随分と長くなってしまいましたが、では、いよいよ 数学オリンピックの過去問「 シェリルの誕生日 」に挑戦してみましょう。
| 14日 | 15日 | 16日 | 17日 | 18日 | 19日 | |
| 5月 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
| 6月 | 〇 | 〇 | ||||
| 7月 | 〇 | 〇 | ||||
| 8月 | 〇 | 〇 | 〇 |
アルバートには誕生した月のみが教えられ、バーナードには誕生した日のみが教えられます。問題では、表を見せられたとたんに、アルバートが「 2人ともシェリルの誕生日がいつなのか絶対に分からないよ。」と言います。すると、まもなくバーナードが「 ああ! シェリルの誕生日がいつなのか分かったよ。」と言います。すると、アルバートも「 今、僕もシェリルの誕生日がいつなのか分かったよ。」と言います。
では、解いていきましょう。まず、先ほどの問題でやったことをしてみます。最初のうち2人とも答えが分からなかったわけですから、除外される日が分かります。

| 14日 | 15日 | 16日 | 17日 | |
| 5月 | 〇 | 〇 | ||
| 6月 | 〇 | |||
| 7月 | 〇 | 〇 | ||
| 8月 | 〇 | 〇 | 〇 |

| 14日 | 15日 | 16日 | 17日 | |
| 5月 | 〇 | 〇 | ||
| 7月 | 〇 | 〇 | ||
| 8月 | 〇 | 〇 | 〇 |

| 14日 | 15日 | 16日 | |
| 5月 | 〇 | 〇 | |
| 7月 | 〇 | 〇 | |
| 8月 | 〇 | 〇 |
上の表を前提に、アルバートが「 2人ともシェリルの誕生日がいつなのか絶対に分からないよ。」と言ったということを考えると、その通りで、それから先に全く進めなくなってしまいます。アルバートがここまで洞察して発した言葉であるならば、彼の言葉の行間には何も意味はありません。しかし、彼はここまで洞察せずに言葉を発しているので、彼の言葉には意味があるのです。表を見せられたとたんにアルバートは言葉を発しています。そこのところが味噌なのです。「しばらくして」ではなく「表を見せられたとたんに」なのです。
そこで、再び、元の表に戻りましょう。
| 14日 | 15日 | 16日 | 17日 | 18日 | 19日 | |
| 5月 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
| 6月 | 〇 | 〇 | ||||
| 7月 | 〇 | 〇 | ||||
| 8月 | 〇 | 〇 | 〇 |
表を見せられたとたんに、アルバートが「 2人ともシェリルの誕生日がいつなのか絶対に分からないよ。」と言ったということは、「 僕もそうなんだけど、この表を一目しただけでは、バーナードがシェリルの誕生日がいつなのか分かる可能性は0だよ。」と言ったということに等しくて、「 もし、5月または6月がシェリルの誕生日なら、バーナードがすぐに分る可能性があるのだけども、残念ながらシェリルの誕生日は5月でも6月でもないよ。」と言ったのに等しいのです。
| 14日 | 15日 | 16日 | 17日 | |
| 7月 | 〇 | 〇 | ||
| 8月 | 〇 | 〇 | 〇 |
上の表からバーナードが「 ああ! シェリルの誕生日がいつなのか分かったよ。」と言ったということは「 シェリルの誕生日は14日ではない。」と言ったのに等しいのです。だから、その後すぐにアルバートもシェリルの誕生日が分かったということは、アルバートには8月でなくて7月であるということが教えられていたということです。こうして、シェリルの誕生日は 7月16日 であることが判明したわけです。
バーナードの思い:
-
シェリルの誕生日は 5/16 か 7/16 のどちらかだ。
アルバートがシェリルの誕生日は5月ではないことを知らせてくれたので、シェリルの誕生日が 7/16 であることが分かった。
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シェリルの誕生日は 7/14 か 7/16 のどちらかだ。
バーナードはまず次の日らをシェリルの誕生日の候補に上げたはずだ。
( 5/16 または 7/16 ) または ( 7/14 または 8/14 )
僕がシェリルの誕生日は5月ではないことを知らせたので、彼はその中から 5/16 を削除した。残った3つの中でシェリルの誕生日が分かったのだから、( 7/14 または 8/14 )ではないのだ。シェリルの誕生日は 7/16 である。
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