(2) 完全弾性正面衝突
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今度は、 現実にはありえない完全弾性正面衝突のケースを考えてみましょう。 無重力真空空間における完全弾性衝突では、 運動量が保存されることはもちろん、 運動エネルギーも保存されます。 したがって、 完全弾性衝突では熱が発生することはありません。


衝突の前後で変化しない運動量の総和 :

衝突後の前後で変化しない運動エネルギーの総和 :

これを、 右向きに速さ
で等速直線移動している観察者の観察に変更してみましょう。

衝突の前後で変化しない運動量の総和 :

衝突後の前後で変化しない運動エネルギーの総和 :

完全非弾性正面衝突のところで、 「 相手のことをよく知ろうと思ったら、 自分がゼロまたは無にならなければならない。」 と申しましたが、 これに固執しすぎて、 衝突の後も当事者的立場を貫こうとして、 自分が静止している観察系で考えようとすると、 間違いが起こります。 では、 このことを確かめてみましょう。
を、 終始、 質量
の立場に立って観察したものが次の図です。

衝突前の運動量の総和 :

衝突後の運動量の総和 :

衝突の前後で変化しない運動エネルギーの総和 :

運動エネルギーは保存されていますが、 運動量が保存されていません。( 絶対値は同じでも向きが違います。) このような間違いが起こってしまった原因は、 衝突の前後で、 観察者の慣性系の乗り換えが起こってしまったからです。 衝突前は、 観察者は、 右向きに速さ
で移動していますが、 衝突後は、 観察者は、 左向きに速さ
で移動しています。また、
の完全非弾性衝突を、 終始、 質量
の立場に立って観察したものが次の図です。

衝突前の運動量の総和 :

衝突後の運動量の総和 :

衝突前の運動エネルギーの総和 :

衝突後の運動エネルギーの総和 :

運動量 も 運動エネルギー も保存されていません。
と
より、 物理学的観察の途中で慣性系の乗り換えをして、 その前後を繋げることは、 論理的に禁じ手であることがわかります。
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