U. 電 気 力 学 の 部 の 要 約
§6. マクスウェル方程式の座標変換、磁場内の電荷の運動に伴い生じる起電力について
(1)マクスウェル方程式がすべての慣性系で成り立つことから導かれる、 電場と磁場の座標変換方式
アインシュタインは、 4つのマクスウェル方程式のうちの2つを提示し、 これがローレンツ変換を受けても同様の形になることから、「 電場と磁場の座標変換方式 」を導いています。
【V 式 】 ファラデーの電磁誘導の法則を表す式 :

【 W 式 】 マクスウェルの法則を表す式 :

しかし、 途中がかなり省略されているため、 原論文だけでは理解困難です。 そこで、 風間洋一著「 相対性理論入門講義 」( 培風館1997年 )を参考にさせていただきました。 電場と磁場の変換性を求めるためには、 必ずしもマクスウェル方程式の 【 W 式 】 は必要なく、 かわりに 【 U 式 】 が必要のようです。 このことを踏まえた上で、 アインシュタインが言っている行間の意味を述べると、 次のようになります。
ある静止系で次のような電場と磁場が存在しているとする。
電場
, 磁場 
この静止系( 第1観察者の座標系 )に対して、 X軸方向に速さ
で運動系が移動しており、 この運動系において静止している第0観察者がこの電場や磁場を観察すると、 次のようであったとする。電場
, 磁場 
まず、 最初に「 電場と磁場の座標変換方式 」を導き出すための材料を紹介する。
マクスウェルの方程式 :【 U 式 】

【 V 式 】


第2観察者から、 第2観察者に対してχ軸方向へ速さ
で移動している第1観察者への、 ローレンツ変換式 :



このとき、 次の式たちが成り立つ。
・ ・ ・ ・(式1)
・ ・ ・ ・(式2)
・ ・ ・ ・(式3)
・ ・ ・ ・(式4)では、 導いてみよう。 まず、 【 V 式 】 のχ成分に関して、 次の式が成り立つ。

この式に、(式2)、(式3)、(式6)を代入すると、

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・(式7)
【 U 式 】 に、(式1)、(式2)、(式3)を代入すると、


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・(式8)
(式8)を(式7)に代入すると、

この式 と 次の式 とを比較することにより、

我々は、 次の式たちを得る。



【 V 式 】 の y成分 や z成分 に関しても同様にして、 我々は次の式たちを得る。
これらが、「 電場と磁場の座標変換方式 」である。


これらの関係式は、「 複素数電磁場テンソル 」 の「 複素数ローレンツ座標変換 」による座標変換と同じです。 そこで、 これからそのことを紹介します。
まず、「 複素数電磁場テンソル(
)」を次のように表します。
* ここでは、 本来の電場を光の速さで割ったものを、「 実質電場 」として
用いています。 光の速さを
とする単位系では、 本来の電場が「 実質電場 」を表します。
実質電場
は、 電束密度
( 私は、 これを「 実質磁場 」と言っています。)と共に電磁場テンソルを構成します。
「 複素数電磁場テンソル 」を「 複素数4次元的電流 」に作用させると、「 4次元的力 」が得られます。



次に、 静止系の座標系( 第1観察者の座標系 )の、 それに対してX軸方向に速さ
で移動している運動系( 第0観察者の座標系 )への「 複素数ローレンツ座標変換(
)」は、 次のように表されます。
したがって、 第1観察者の座標点は、 次のように第0観察者の座標点に変換されます。


物理学における座標変換は、 合同変換です。 つまり、 変換後もベクトルの大きさは不変です。 そこで、 物理学における座標変換を担うテンソル
については、
が成り立ちます。 つまり、 物理学における座標変換を担うテンソルは直交行列です。*
は
の 逆行列 です。
は
の 転置行列 です。虚数時間と実数空間からなる4次元時空間座標を変換する「 複素数ローレンツ座標変換 」は、 4次元時空間点の原点からの距離
を変えないように座標変換します。「 4次元的電流 」から「 4次元的力 」を得るための関数であるところの「 複素数電磁場テンソル 」が、 座標変換にてどのように変換されるか? それは、 演算子としてのテンソル
が、 座標変換を担うテンソル
により、 どのように座標変換されるのかを求める、 次の公式を使用します。
では、 やってみましょう。
「 複素数電磁場テンソル 」は
に相当し、「 複素数ローレンツ座標変換 」は
に相当します。
ですから、次のようになります。

したがって、 次のようなります。


※ コメント :
-
「 複素数ローレンツ座標変換 」の表現行列は、 正確に言うと、 直交行列ではなく、 ユニタリー行列です。 ユニタリー行列とは、 その転置複素共役行列( 転置行列に相応するもの )がその逆行列に等しくなっている行列のことです。 虚数がその成分に含まれている行列のうち、 対称行列に相応するものがエルミート行列であり、 直交行列に相応するものがユニタリー行列です。
「 電磁場テンソル 」の考え方によると、 電荷に働く力は
と
との和で表されます。 アンシュタインは「 電磁場テンソル 」については一切触れていません。 その代わり、 彼は次のように言っています。
と
との和で表されます。 アンシュタインは「 電磁場テンソル 」については一切触れていません。 その代わり、 彼は次のように言っています。
電荷が速度
で移動しているとする立場からすると、次の2つの力が働く:クーロン力:
ただし、 
* 彼は、 クーロン力のことを「 電気力 」と言っています。
ローレンツ力:
ただし、 
* 彼は、 ローレンツ力のことを「 起電力 」と言っています。
電荷が静止しているとする立場からすると、 次の1つだけの力が働く:クーロン力:
ただし、
の 2つの力を合わせたものは、
の1つの力と等しい。
以上の考察より、 ローレンツ力は、 クーロン力を違った角度から見たものであり、 ローレンツ力を電荷が静止している座標系でのクーロン力に置き換えることにより、 電気力学は簡単になることがわかる。
2つの電荷
と
が 静止している座標系があります。 ここで、 電荷
が電荷
に及ぼす力について考えてみましょう。 それは、 電荷
が存在する場所に電荷
が作る電場 (
) が電荷
へ及ぼす力であるとも言えます。 そして、 その力は、
で表すことができます。では、 この座標系に対して、 速度
で移動している観察者にとっては、 電荷
が電荷
に及ぼす力はどうなるでしょうか?2つの電荷はそれぞれ、 電流
、 電流
を形成します。 電流
はビオ・サバールの法則により電荷
の位置する場所に磁場(
)を作るとされます。 そして、 この磁場の作用により、 電流
に力が作用します。 それは、
で表されます。* アインシュタインは、 移動する電荷が生み出す磁場のことを
「 起磁力 」と言っています。
また、 電荷
の位置する場所には、 電荷
による電場(
)が形成されており、 電荷
には、
の力も作用しています。そこで、相対性原理により、 次の式が成り立ちます。


以上のことを、 アインシュタインは、「 形成される電場と磁場についても、 電気力と磁気力( 電磁力 )との関係と同じ様に、 座標変換における統一性が認められる。」という主旨の一言で片付けています。
§7. ドップラー現象および光行差の理論
(1)ドップラー効果
アインシュタインは、 2次元空間を伝わる平面波を用いてドップラー効果を説明しているのですが、 私には難しすぎて理解することができません。 そこで、 空間を1次元と考え、 光源に対して静止している第1観察者と、 光源に対して速さ
で近づいている第2観察者について、 アインシュタインの考察方法を用いて考えてみます。第1観察者にとって負の方向に静止した光源から負の時刻に観察者に向かって放たれ始めた光の、 時空点
における光の状態を、 次の波動関数で表します。
また、 第1観察者にとって負の方向に速さ
で光源に向かって移動している第2観察者の座標系における、 空点
における光の状態を、 次の波動関数で表します。
第1観察者の光の方程式を第2観察者の座標系に転換するには、 第1観察者の光の方程式にローレンツ変換式を代入して、 次のようにします。 このとき、
や
が
や
に変わっていないことに注意してください。

この式と、 第2観察者にとっての光の方程式を比べることによって次の式たちが成り立っていることがわかります。

したがって、 第2観察者にとっては、 光の振動数が
倍 に増加していることがわかります。現在の定説によると、 観察者が非常に遠くに離れた所に存在する光源に対して速さ
で移動しているとき、 運動方向に対して角度
の方向にあるその光源から放たれる光の光行差の角度
は次の式で表されるそうです。( ただし、 光の速さを
とする単位系です。)
アインシュタインは、 2次元空間で光行差を求め、
のとき、 非常に遠く離れた所に存在する光源から放たれる光の光行差は
になることを導き出していますが、 私には難しすぎて理解することができません。-
光の強さは、 光の振動数に比例する。 したがって、 光源に向かってまっすぐに速さ
で遠ざかっている観察者にとっての 光の強さ は、 ドップラー効果により、 光源に対して静止している観察者にとっての 光の強さ に比べて
倍 に増加している。 また、 光の速さで観察者に向かって近づいてくる光源から放射される光は無限の強さを持っている。* 現在では、 波の強さ と 波のエネルギー に関して、 次のことが解っています。
波の進行方向に垂直な単位面積を単位時間に通過する波のエネルギーの時間的平均を、 波の強さ という。 単振動の波の強さは、 振幅の2乗に比例し、 かつ、 振動数の2乗に比例する。
次のように振動する 実質電場(
)と 実質磁場(
)とがある。
, 
* ただし、 電磁波の速さを
とする単位系とする。実質電場とは、 電場を光の速さで割ったもの。
実質磁場とは、 電束密度のこと。
これらで構成される電磁波はZ軸方向に伝わるが、 この電磁波の Z軸上の空点 z における 時刻 t の瞬間での 単位時間に単位面積当たり伝わる波のエネルギー は、 次の式で与えられる。
( ポインティングベクトル )また、 この電磁波の強さは、 次の式で与えられる
( 放射束密度 )以上のことを踏まえて、 また、 光子の概念も加えて、 アインシュタインの言っていることを、 次のように変えてみます。
光子のエネルギーは、 光子の振動数に比例する。 したがって、 光源に向かってまっすぐに速さ
で近づいている観察者にとっての 光子のエネルギー は、 ドップラー効果により、 光源に対して静止している観察者にとっての 光子のエネルギー に比べて
倍 に増加している。 また、 光の速さで観察者に向かって近づいてくる光源から放射される光子は無限のエネルギーを持っている。§8. 光のエネルギーの変換則
(1)光の塊が持つエネルギー
光源に対して静止している第1観察者と、 光源に対して速さ
で近づいている第2観察者とでは、 光のエネルギーがどれくらい違うのか、 考えてみましょう。第1観察者にとって負の方向に静止した光源から負の時刻に観察者に向かって放たれ始めた光の、 時空点
における光の状態を、 次の波動関数で表します。
また、 第2観察者の座標系における、 空点
における光の状態を、 次の波動関数で表します。
第1観察者にとって単位時間に1点を通過する光のエネルギーを
、また、 第2観察者にとって単位時間に1点を通過する光のエネルギーを
とします。すると、 ドップラー効果のところで見てきたように、 次のようになります。


ここからが、 アインシュタインの、 するどい考察です。
いま、 第1観察者の座標系において、 光と同じ速さでX軸上を観察者に対して近づいている小さな半径
の球体空間を考える。すると、 この球体空間を表す方程式は、 次のようになる。

したがって、 この球体空間の体積(
)は、 次のようになる。
よって、 この球体空間が持つエネルギー(
)は、 次のようになる。
では、 これを光源に対して速さ
で近づいている第2観察者が見ればどうなるかを考えてみよう。 そのためには、 次のようなローレンツ変換式を用いる。
すると、 この球体空間は楕円体になり、 次の方程式で表される。


したがって、 この楕円体空間の体積(
)は次のようになる。
よって、 この楕円体空間が持つエネルギー(
)は次のようになる。
したがって、




よって、

このことより、
は
に比例するということがわかる。 つまり、 この仮想の球体空間が持つエネルギーは、 光の角振動数に比例するということである。この仮想の球体空間とは、 当時アインシュタインが提唱していた「 光量子 」のことです。 今では、「 光子 」と言われますが、 光子は、 エネルギー
の光の塊です。※
は、 プランク定数です。※ 振動数
と 角振動数
との関係は、
です。アインシュタインは、反射面の法線方向に速さ
で移動している鏡に対して、 角度
で入射し反射する、 角振動数
の光の、 鏡に対して単位面積あたりに与える圧力(
)が次の式で与えられることを導き出していますが、 私には難しすぎて理解することができません。
§9. 携帯電流がある場合のマクスウェル方程式の変換
(1)携帯電流がある場合のアンペールの法則を表す式のローレンツ変換
-
4つのマクスウェル方程式のうち、 携帯電流がある場合のアンペールの法則を表す式
は、 ローレンツ変換を受けて、
も相対論的速度合成に従い、 新たな座標系での式に変換される。
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