第5章 相対時間と絶対時間の関係
すやすやと眠っている我が子を見て、「 この子は今どんな夢を見ているのだろう? 」と思うことがあります。 子供が見ている夢を、 リアルタイムで私が見ることができたとしても、 それはきっと、 子供が見ている夢の、 ありのままの姿ではないと思います。 観察者が見ている物を、 別の観察者が観察すると、 いったいそれはどのように見えるのでしょうか? それに答えてくれるのが、 逆ローレンツ変換なのです。
本書には、 これから3種類の観察者が登場して来ます。 まず、 静止している物質だけを観察する人です。 これを 第0観察者 と呼ぶことにします。 次に、 いろんな方向にいろんな速さで等速直線運動している多数の第0観察者達が見ている物々を観察する人、 それを 第1観察者 と呼ぶことにします。 最後に、 第1観察者に対して等速直線運動をしている人が、 多数の第0観察者達が見ている物々を観察する場合です。 これを 第2観察者 と呼ぶことにします。
この章では、 第0観察者の観察内容から、 第1観察者の観察内容を導いていくことにしましょう。 それには、 dr0 = 0 であるという条件下での逆ローレンツ変換を利用します。
まず、(式 4-10)の逆ローレンツ変換を用いて、 t と r の微小変化がどのように座標変換されるかを考えることにします。 第0観察者の座標系を( r0 , t0 )、第1観察者の座標系を( r , t )とし、 限りなく 0 に近い微少変化を表す記号として d( デルタ )を使用します。 すると、
・ ・ ・ ・(式 5-1)
したがって、 ( dr )2 − ( dt )2 = ( dr0 )2 − ( dt0 )2
・ ・ ・ ・ ・ ・(式 5-2)
さあ、 これから、 速さ v の等速直線運動系の中で静止している物質は、 静止している慣性系では、 どのように運動していることになるのか、 考えていくことにしましょう。 つまり、 第1観察者に対して速さ v で移動している第0観察者が観察している静止している物質を、 第1観察者が観察すればどのように見えるのかを、 考えていくことにしましょう。
第0観察者が観察している静止している物質は、 常に dr0 = 0 を満たします。
dr0 = 0 の時、(式 5-1)は、 以下の2つの式で表せます。
・・・・・・・・(式 5-3)
・・・・・・・・(式 5-4)
ここで、(式 5-3)より、
だから、 これを(式 5-4)に代入して、
dr = v×dt となります。 ・・・・・・・(式 5-5)
また、(式 5-2)は、 dr0 = 0 の時、 次のように表すことができます。
( dt )2 = ( dr )2 + ( dt0 )2 ・・・・・・(式 5-6)
(式 5-3)〜(式 5-6)が、 第0観察者が観察している物質を、 第0観察者に対して速さ −v で等速直線運動をしている第1観察者が観察すれば、 どのように見えるのかの、 答えです。
さあ、ここで問題です。
dt は、 さまざまな物質がさまざまな方向にさまざまな速さで運動しているのを観察している第1観察者の時間であり、 dt0 は、 静止している物だけを観察している第0観察者の時間です。 では、 いったいどちらが絶対的な時間で、 時計の針を進める源になる時間なのでしょうか?
答えは、 第1観察者の時間です。 観察する者を中心にして、 さまざまな運動をする観察される物々があり、 それらがいろいろに比較されるというのが、 自然界でも人間の意識の世界でも、 当たり前のことです。( 宗教の世界は、この逆みたいです。) したがって、 dt が絶対的なものであり、 基準となるものです。
このことを理解してもらうために、 図0501 を見てください。
これは、(式 5-6)を図式化したものです。 横軸が r 、縦軸が t0 となっています。 dt は、座標( dr , dt0 )の原点からの距離になっていますね。

次に、 図0502を見てください。 dt が一定の中で、 dr と dt0 が(式 5-6)の条件を満たしながら、 変化していっているのがわかると思います。
図0502
観察される物質が観察者に対して静止している場合は、 dr = 0 となり、 物質の運動は、 t0 軸上のベクトルで表されます。
(式 5-6):( dt )2 = ( dr )2 + ( dt0 )2 の、 dt0 を 固有時間( 相対時間 )といい、 dt を 時間( 絶対時間 )といいます。 固有時間 というと、 なんだか不変的な時間のように思われますので、 私は、 固有時間 のことを 相対時間 と言うことにしています。
相対時間とは、 第1観察者が観測する第0観察者の時間のことです。 つまり、 静止している観察者によって観測された、 観察している物質と同じ速度で等速直線運動をしている観察者が通り抜ける時間のことです。
第0観察者が第1観察者に対して静止している場合には、 相対時間は絶対時間と等しくなります。 それは、(式 5-3)で v = 0 の場合であり、(式 5-6)で dr = 0 の場合です。
第6章 ミンコフスキーからイプシュタインの4次元時空間へ
前章では、 第0観察者が見ている物を、 第1観察者が観察すると、 どのように見えるのかを探ってみました。 では今度は逆に、 第1観察者が見ている物を、 第0観察者が観察すると、 どのように見えるのかを考えてみましょう。 第0観察者が観察すると止まって見えることは間違いないと思うのですが ・・・・・・ 。まず、 dr0 = 0 の時、 逆ローレンツ変換から、 次式が導かれたことを思い出してください。(式 5-6)を再掲します。
( dt )2 = ( dr )2 + ( dt0 )2
ここで、横軸が r で、縦軸が t0 の座標を考えます。
<略>
3次元空間と相対時間からなる4次元時空間を、 私は「 イプシュタインの4次元時空間 」と言っています。「 イプシュタインの4次元時空間 」には、 次に掲げる4つの特徴があります。
第1観察者を観察の主人公とする時空間である。
4次元時空間は、 3次元の空間と1次元の相対時間から成り立っている。
表面的には、 第1観察者系と第0観察者系が混合した4次元時空間座標である。つまり、 空間は第1観察者系であり、 時間は第0観察者系である。 ただし、 時間は
第0観察者から第1観察者への座標変換が行われる前の第0観察者の時間である。
しかし、 実質的には、 時間軸も第1観察者系であり、 時間軸は正確には相対時
間軸である。
絶対時間をパラメーターにして、 万物は絶えず速さ
で、 この4次元時空間を移動している。 したがって、 物質の運動を表す軌道の道のりの長さは、 その間の
絶対時間の長さに等しい。
イプシュタインの4次元時空間座標では、 運動のパラメーターとしての絶対時間の確認が不可欠です。 そこで、 座標位置と絶対時刻がわかるように、 次のような方法で表すことにしました。
( 空間座標 , 相対時刻 , [ 絶対時刻 ] )
イプシュタインの時空間の一例を示してみます。 考えやすくするために、 空間を1次元とします。 物質Aと物質Bは瞬間的に速度を変えることができ、 2つは常に等しい速度で移動( 静止を含む )するとします。
観察の開始時の2つの物質が存在する時空点を次のようにします。
物質A :
物質B : 
そして、 2つの物質は、 最初の
に光速の6割で正の方向に移動し、 次の
に静止し、 最後の
に光速で正の方向に移動しました。 観察が終了した瞬間の2つの物質が存在する時空点は次のようになります。
物質A : 
物質B : 
2つの物質の移動を、 イプシュタインの時空間を使って、 次の 図 0601 に表してみます。
図 0601

イプシュタインの4次元時空間座標では、 物質の軌跡の「 道のり 」が絶対時間を表します。 物質が本当に存在している位置や時刻を表すには、 空間座標 と 絶対時刻 が必要ですが、 相対時刻は必要ありません。 そういう意味では、「 イプシュタインの4次元時空間は、 仮想時空間である。」と言えます。
まずは、 ミンコフスキーの時空間をイメージしてみましょう。
等速で上昇する広いエレベーターの中の空間を、 2つの物質が異なる速度で常に等速直線運動しているイメージです。 その空間速度の大きさは0以上1以下です。 2つの物質は瞬間的に速度を変更することができます。 上昇するエレベーターは時の経過を表しています。 2つの物質が存在する時空点の絶対時間成分は常に等しいです。 ここで、 2つの物質の衝突をイメージをしてみましょう。 それはエレベーター内での2つの物質の衝突のイメージそのものです。 つまり、 衝突とは、 2つの物質が存在する時空点の X軸空間成分 と Y軸空間成分 と 絶対時間成分 が すべて等しくなっているということです。
次に、 イプシュタインの時空間をイメージしてみましょう。
2つの物質は、 3次元時空間を常に速さ 1 で移動しています。 瞬間的に空間速度を変えることがあったとしても、 3次元時空間を移動する速さは常に 1 です。 2つの物質が存在する高さ( 相対時間成分 )は、 異なる場合のほうが多いです。 ここで、 2つの物質の衝突をイメージをしてみましょう。 2つの物質が存在する時空点の X軸空間成分 と Y軸空間成分 と 絶対時間( それは物質の軌跡の長さの総計で表されます。)が共に等しくなってさえいれば、 相対時間成分が一致していなくとも衝突です。
<略>
マクスウェル方程式とは、 電場と磁場との相互関係を4つにまとめたものです。 電場と磁場との相互関係はどんな慣性系でも成り立ちます。 このことから、 物理学における座標変換の方式が発見されました。 それがローレンツ変換です。 座標変換とは、 変換前の座標系の時空点を、 ある規則に従って、 変換後の時空点に1対1対応させることです。 物質は絶えず座標内の時空点を乗り換えながら4次元時空間を移動し続けています。 ですから、 現実を扱う物理学における物質の移動様式の座標変換は、 物質が存在する時空点の座標変換で表されます。
考えやすくするために、 空間をX軸だけの1次元であるとします。 A君に対して、X軸の負の方向に速さ
で移動しているBさんがいます。 A君の座標系からBさんの座標系への変換は、 次の式で与えられます。 この式を、 私は「 逆ローレンツ変換式 」と言っています。
ローレンツ変換 あるいは 逆ローレンツ変換式 から導かれるのは、 次の関係式です。

これは、「 時間を虚数とする4次元時空間座標における、 座標変換による4次元時空間距離不変の法則 」と言うべきものです。 本当は次のように記載した方がいいのかもしれません。

これは、「 座標変換における固有時間不変の法則 」も言われます。
と
の値によっては、 ルートの中がマイナスになります。 ルートの中がプラスになる場合は「 空間的領域 」と言われます。 また、 ルートの中がマイナスになる場合は「 時間的領域 」と言われます。 ミンコフスキー空間で、 時空原点を通過して移動する物質が存在可能な時空点を表した時の、 ライトコーンの内側になる領域が「 時間的領域 」です。ではこれから、 時間的領域と空間的領域との境界における座標変換の例を見てみましょう。
A君の座標系において、 ある位置に存在する光子が
かかって移動したとします。 つまり、 観察開始時に光子が存在する時空点を
とし、 観察終了時に光子が存在する時空点を
とします。 すると、 次の式が成り立ちます。
したがって、次の式が成り立ちます。
・ ・ ・ ・( 式 6-1)では、 実際に次の式が成り立つのかどうか確かめてみましょう。

A君の座標系における 時空点
と 時空点
をそれぞれB君の座標系の時空点に変換すると、 次のようになります。時空点

時空点

したがって、
と
との時空間距離の2乗は、 次のようになります。
以上で、確かめることができました。
以上のことををもっと簡単にしてみます。 つまり、 時空原点からの時空間距離を求めるようにしてやります。 そのために、 次のように置き換えます。
と
と 
すると、( 式 6-1)は次のようになります。
・ ・ ・ ・( 式 6-2)ただし、 この式は時空原点から伝わる電磁波が存在し得る時空点にのみ言えることであることを忘れないでください。
私は次のように考えています。
「 ローレンツ変換は、 電磁場の相対性原理を満たすとともに、 電磁波の伝播に対
して座標系間での変換を表す。 しかし、 それは物質の移動に対して座標系間での
変換を表す道具ではない。 にもかかわらず、 ローレンツ変換は移動する物質に対
しても適応ありとして使用されているので、 数々の矛盾が生じている。」
ではこれから、 このことについて説明します。
( 式 6-2)を見てください。 A君の座標系において、 時空原点を通過した光子が存在することのできる時空点は
と表されます。 そこで、 次のような考えが私の頭に浮かんできました。「 ローレンツ変換は、 マクスウェル方程式( 電場と磁場との相互関係 )の相対性
原理から導き出された。 マクスウェル方程式の中の 空点
や 時点
は任意の
や
ではなく、
の関係が成り立つ場合の
と
ではないのか?だとしたら、 ローレンツ変換は、 電磁波の伝播の座標変換であって、 物質の移動
の座標変換を表しているものではないことになる。」
( 式 6-2 )は次のようにも表されます。

そこで、この
は、 光子が移動する相対時間であると考えます。(
ですから実際は移動しないのですが )そして、 物質は光子と違って相対時間を移動すると考え、 それを
と置き、 次のような式を仮定します。
さらに、 次のような式を仮定します。

この仮定の式こそ、 私の相対性理論の勘違いの根本です。
第7章 速度の合成
この章では、 第1観察者が観察している物を、 第2観察者が観察したら、 どのように見えるのかを考えていきます。(1)水平方向の速度の合成
まず、 dr0 = 0 の条件下で、(式 5-1)の「 微少時空間の逆ローレンツ変換 」による変換を2回繰り返してください。 すると、 第0観察者が観察している物を第2観察者が観察するとどのように見えるかを、 求めることができます。



新しい座標系で観察された物質の運動の速さ( v’ )は、 dr’ ÷ dt’ で求められますから、 次のようになります。
・ ・ ・ ・( 式 7-1)
光速不変の原理は、 次の3つの命題がすべて真であることを言ったものです。
@ 移動しているピストルから放たれた弾丸と違って、移動している光源から放たれた
光子は、光源の速度の影響を全く受けない。
A 1つの光子は、誰が観察しても速さ
で移動している。B すべての光子は、速さ
で移動している。@ は次のように正しく解釈されなければなりません。
「 一次元での速度の合成は、(式 7-1)で表されるという事実があり、 かつ、 静止し
ている光源から放たれる光子の速さは
であるから、 光子は光源の速度に関わらず、 速さ
で移動する。」これに対して、 次のように考えるのは間違いです。
「 弾丸は移動している点から放たれるが、 光子は座標系の静止している空点か ら
放たれる。 」
この解釈が間違いである理由は、 相対性理論は光子の移動と物質の移動を統一させた理論だからです。 もし、 このように解釈しますと、「 ローレンツ変換は、 光子のふるまい( @ 電磁場的振動、 A 電磁波的振動、 B 固有速伝播、 C 量子的存在 ) の事実のうち @ と B から導かれたものなので、 光子とは運動の形態が違う物質の移動に関しては、 ローレンツ変換は当てはまりません。」との反論に対して、「 確かにそうだけれども、 ローレンツ変換を少し改造してやれば、( 絶対時間を取り戻してやれば、)光子の移動と物質の移動とは同一線上になってくる。」などと反論することができなくなってしまいます。
さて、 マイケルソン ・ モーレーの実験や、 アインシュタインの相対性理論に関する最初の論文の中でのローレンツ変換の導入は、 まだ光速不変の原理が確立する前で、「 光がエーテルを伝わり、 光速はエーテルの観察者に対する速度によって変化する。」という設定ですので、 この中の「 ガリレイ変換によるニュートン力学的な速度合成 」を引き合いに出して、 相対性理論を否定することは間違っています。
「 光はエーテルを必ず速さ
で伝わる。」と考えると、 次のことを言うことができます。
: エーテルに対して静止している観察者にとっては、 光の速さは
である。
: エーテルに対して速さ
で移動している観察者にとっては、 その移動の方向に伝わる光の速さは
である。なぜなら、 静止している観察者に対して速さ
で移動しているエーテルを、その逆向きに光が速さ
で伝わるのと、 同じことだから。
: エーテルに対して静止しているA君にとっての、 エーテルに対して速さ
で移動しているBさんに対する、 その移動の方向に伝わる光の速さは
である。なぜなら、 A君にとっての光の速さは
であり、 かつ、 A君にとってのBさんの速さは
だから。
と
の値が同じになっています。 このように、 主観的な観察者にとっても第3者的な観察者にとっても、 速さは変わらないというのが、 相対性理論が誕生するまでのニュートン力学です。これらを、 光速不変の原理に立って、 相対論的に書き直してみます。
: 光は媒体を必要とせず、 どんな観察者にとっても、必ず速さ
で伝わってくる。
: 光源に対して速さ
で移動している観察者にとっては、 その光源から放たれる光の速さは
である。* 光源からまっすぐに遠ざかっている観察者の場合は、
次の式を使って光の速さを求めることができます。

: 静止しているA君にとっての、 A君からまっすぐに速さ
で遠ざかっているBさんに対する、 A君の方向からBさんに届く光の相対的な速さは
である。「
は、 第3者的な速度であり、 光速不変の原理を礎にしている相対性理論においては、 不要 かつ 有害 なものである。 第3者的な速度は、 相対性理論を混乱させる幻の速度でしかない。」ということについては、 第9章 と 第11章 と 第12章 で述べることにします。(2)垂直方向の速度の合成
< 略 >
「 観察者にまっすぐに近づいている、 または、 遠のいている物質Aから、 垂直方向に物質Bが投げ出された時、 物質Bの垂直方向の速さは、 物質Aと同じ速度で運動している人が見た速さよりも遅くなる。 ということは、 物質Aと同じ速度で運動している人に比べて垂直方向の時間はゆっくりと進むのだ。」と妖怪が言います。
そこで、 ちなみに、 彼に次のような質問をしてみましょう。
「 垂直方向の時間の進み方だけがゆっくりになるというのは、 納得がいきません。 だって時間は1次元ですからね。 だったら、 垂直方向の空間が伸びると考えてはどうですか? 結果は同じでしょう。」
すると彼は、 こう言います。
「 ハハハハハ、 愚かな人間どもよ。 お前達の考え方では、 たちまち次のような罠に陥ってしまうのだ。 思い浮かべてみたまえ。 今、 2つの同じサイズのリングが互いに向き合いながら、 両側から高速で飛んできて、 お前の目の前で衝突した。 しかし、これを右のリングと同じ速度で飛んでいる帝釈天が見れば、 2つのリングは衝突せずに、 左のリングが右のリングの外を通って飛び去ってしまい、 左のリングと同じ速度で飛んでいる阿修羅が見れば、 2つのリングは衝突せずに、 右のリングが左のリングの外を通って飛び去ってしまう。 どうだ、 わかったか! お前達はいつも、 悪や善を勝手に作り出しては、 どちらかのレッテルを貼って、 いろいろと区別しているが、 そもそも ・ ・ ・ ・ 」
実は、 妖怪はつじつま合わせの名人なのです。 光速不変の公理をキープするためには、 垂直方向の速さが相対時間の絶対時間に対する比率と同じ割合で遅くならなければならないことを、 彼はよく知っているのです。
(式 7-4):
を私は「 相対的垂直速度の法則 」と言っています。では、 これから、「 相対的垂直速度の法則 」の根拠になる思考実験をしてみましょう。 思い浮かべてください。 今、 第1観察者に対して、 物質Aが速さ
で等速直線運動をしています。 物質Aは、時刻
に第1観察者と同じ位置にあり、 Y軸方向に運動しています。 物質Aが、 時刻 
の時の位置を
とすると、 次の式が成り立ちます。
・ ・ ・ ・ ・ (式 7-5)これを、 X軸の負の方向に、 第1観察者に対して速さ
で等速直線運動をしている第2観察者が観察したときに、 物質Aの運動が次の式たちで表されたとします。 ただし、 2人の時空原点は重なるとします。

このとき、
が
と
を用いてどのように表されるか、 考えてみましょう。第2観察者から第1観察者への座標変換は、 次のローレンツ変換に従います。

これらの式を(式 7-5)に代入すると、 次のようになります。



したがって、 次の式が成り立ちます。

この式から、 第2観察者とっての物質AのY軸方向の速さは
であることがわかります。 したがって、 第2観察者とっての物質Aの速さ
は、 次のようになります。
この式は、
かつ
のとき、
です。
または
のとき、
です。
第8章 イプシュタインの4次元時空間の座標変換
注 目 : 「 時空原点を経由して、 瞬間的速度変更をすることなく、 等速直線運動をしている物質 」に限って言うならば、 その物質が存在する時空点の「 イプシュタインの4次元時空間座標( 空間座標 , 相対時刻 , [ 絶対時刻 ] )」から、 私たちは、 その物質の移動速度を読み取ることができます。 これは、 ミンコフスキー空間座標についても同様です。 なぜなら、 物質が存在した2つの時空点がわかれば、 物質の移動速度がわかるからです。
時空原点を通過して、 第1観察者系で速さ v 1 で等速直線運動をしている物質の、 第1観察者に対してそれと反対方向に速さ v 2 で等速直線運動している第2観察者系への座標変換の式


* コメント : 座標変換にて、 相対時間は変化していません。





時空原点を通過して、 第1観察者系で速さ v 1 で等速直線運動をしている物質の、 第1観察者に対してそれと垂直方向に速さ −v 2 で等速直線運動している第2観察者系への座標変換の式


* コメント :


第9章 2つの空点における同時刻の相対性
図0901 は 、第1観察者の座標系です。図0901

AD: 光源Aから観察者に届く光 BD: 光源Bから観察者に届く光
AE: 光源Aの運動 BF: 光源Bの運動
OD: 第1観察者の運動
図0902 は、 図0901 を第1観察者に対して速さ v で移動している第2観察者が見たときの図です。
A’, B’, D’ は、逆ローレンツ変換を利用して求めました。
図0902

A’D’ : 光の軌道
B’D’ : 光の軌道
O D’ : 第1観察者の軌道* 2つの光源の運動は省略しました。
この図から言えることは、 第2観察者系では、 第1観察者が時空点 D’ に達した時に2つの光源から放たれた光が同時に第1観察者に届くのを観察しますが、 実際に2つの光源が光を放つ時刻は異なっているということです。
以上のように、 座標変換によって、 2つの空点の同時刻性が消滅します。 しかし、この説明方法は定説とは少し異なります。 定説は、 第2観察者から第1観察者への座標変換です。 移動している光源から放たれる光が第2観察者に衝突する場合 と 光が光源と同じ速度で移動している第1観察者に衝突する場合 とを比較しながら考察します。
定説では、 走る列車の真ん中で静止している女性 と プラットホームで静止している男性 が登場します。 ではこれから、「 光源がどんな速度で移動していても、 それから放たれる光の速さは常に 1 である。」ということ、 また、「 観察者から同じ距離だけ離れた空点の情報は、 同時刻に認識される。」ということを念頭に置いて考えてください。
定説で、 プラットホームの男性( 第2観察者 )は、 次のように言います。
「 自分にとっては、 自分から同じ距離だけ離れた列車の最前部の光源と列車の最後部の光源から放たれた閃光が、 同時刻に到着するので、 2つの光源は同時に光ったことになる。 しかし、 彼女は2つの閃光を同時に見ないので、 彼女にとっては2つの閃光は別々の時刻に光ったことになる。 その理由は次のようなものである。
私の慣性系では、 列車の最前部の光源 と 列車の最後部の光源 から、 2つの閃光が同時刻に放たれる。 もちろん2つの閃光は同時に私に衝突する。
私の慣性系では、 列車の最前部の光源から放たれる閃光が放たれた空点 と その閃光が彼女に衝突した空点 との空間は、 列車の最後部の光源から放たれる閃光が放たれた空点 と その閃光が彼女に衝突した空点 との空間よりも、 短い。
と
より、 私の慣性系では、 彼女は2つの閃光とは別々の時刻に衝突する。( 彼女は2つの閃光を異なる時刻に観察する。)
したがって、 彼女の慣性系でも、 彼女は2つの閃光とは別々の時刻に衝突する。( 彼女は2つの閃光を異なる時刻に観察する。)
一方、 私の慣性系でも彼女の慣性系でも、 列車の最前部の光源が位置する空点 と 彼女が位置する空点 との空間は、 列車の最後部の光源が位置する空点 と 彼女が位置する空点 との空間と、 常に長さが等しい。
彼女の慣性系では、 閃光が放たれた空点 と 光源が位置する空点は、 同一の空点である。
したがって、 彼女の慣性系では、 列車の最前部の光源から放たれる閃光が放たれた空点 と その閃光が彼女に衝突した空点 との空間は、列車の最後部の光源から放たれる閃光が放たれた空点 と その閃光が彼女に衝突した空点 との空間と、 長さが等しい。
と
より、 彼女の慣性系では、 列車の最前部の光源 と 列車の最後部の光源 から、 2つの閃光が異なる時刻に放たれ、 彼女は2つの閃光を異なる時刻に観察する。 」この定説が間違っていることについては、 第12章「 第3者的観察の放棄 と 新しい座標変換」で述べることにします。 さて、 それは別にして、 ここで、「 2つの空点における同時刻の相対性 」について、 3つのことに言及しておきたいと思います。
1番目は、 この定説の中に「 光速不変の公理 」が誤りである証拠が含まれているように思われることがあるということです。 その誤った考えは次のようなものです。
「 プラットホームの男性からすると、 列車の最前部から放たれた光が列車の中の女性に届くのにかかる時間は、 列車の長さの半分の距離の値よりも少ない時間である。( 目・工・田 単位系 を前提にしています。) この場合、 『 光は、 列車の中の人からすると、 列車の長さの半分の距離 を 列車の長さの半分の距離の値よりも少ない時間 で伝わる。』 したがって、 列車の中の人に対する光の相対的な速さは 1 以上になる。 よって、 『 光速不変の公理 』 は誤りである。」
この勘違いは、 相対性理論を理解するために大変に重要なポイントです。 確かに、プラットホームの人からすると、 そう見えそうです。「 光速と移動する列車とのコラボレーションが光速を越える。 よって、 列車の中の人に対する光の相対的な速さは 1 以上である。」と言いたくなります。 しかし、 実際に、 列車の中の人の立場に立って考えてみてください。 すると、 やっぱり光の速さは 1 であることがわかります。 ここが相対性理論の醍醐味なのです。
このように勘違いした原因は、 次のような理由です。
「 『 プラットホームの人からすると、 光は、 速さ
で、 列車の長さの半分の距離の値よりも少ない距離を、 列車の長さの半分の距離の値よりも少ない時間で、 列車の中の人に伝わる。』 からといって、 『 列車の中の人からすると、 光は、 列車の長さの半分の距離 を 列車の長さの半分の距離の値よりも少ない時間で、 自分に伝わる。』 とは言えないのです。 なぜなら、 後者の文章では、 『 列車の中の人からすると、 』 と言っておきながら、 光が伝わる時間がプラットホームの人の座標系に属しているからです。列車の中の人にとっても、 光の速さは
ですので、 光が伝わる時間と距離は等しくなくてはなりません。 列車の中の人の座標系の時間と空間を用いればそうなるはずです。 空間も時間も列車の中の人の座標系のものを使用しない限り、 列車の中の人の観察内容は正確にはわからないのです。 」速度の座標変換( 速度の合成 )において、 ガリレイ変換による「 第3者的な相対的な速さ 」は v’ = v 1 + v 2 であり、 ローレンツ変換による「 当事者にとっての速さ 」は
です。 相対性理論は、「 第3者的な観察では本当のところの正確な観察は不可能であるので、 常に当事者の立場に立って考えなければならない。」と、 私たちに語りかけてくれます。ところで、 もし次のようであれば辻褄が合うのですが、 残念ながら、 これでは「 光速不変の原理 」が成り立っていません。
第2観察者にとっての、第2観察者に届く列車の最前部から放たれた光の速さ :

第2観察者にとっての、第1観察者に届く列車の最前部から放たれた光の速さ :

第2観察者にとっての、第2観察者に届く列車の最後部から放たれた光の速さ :

第2観察者にとっての、第1観察者に届く列車の最後部から放たれた光の速さ :

光源の速さに関係なく、 どんな慣性系でも光の伝わる速さは
です。 ということは、 光源に対してさまざまな速度で移動しているすべての観察者は、 自分の座標系では( 自分の座標系では、 自分は静止しています )、 光が光ってから、 その時点での光源と観察者との空間距離の値に等しい時間後に、 その光を見るということです。 ですから、 もし観察者が同じ距離だけ離れた空点から放たれた2つの光を同時に見たのであれば、 2つの光は同時に光ったことになるのです。 しかし、 第2観察者が、 第3者的に、 移動している第1観察者が光を見たところを観察する場合を考えた時には、 そうはならないのです。2番目は、 観察者が「 同時刻 」を認識するかどうかを問題にしているのではないということです。
まず、 誤解のないよう、「 同時刻 」とは、「 ある2つの事象が発現する時刻が等しいことである。」ということを確認しておきたいと思います。 これを間違えて、「 観察者が2つの事象を同時に認識すること 」と捕えてはいけません。 すると、「 観察者がするまばたきと被観察者がするまばたきが、 観察者にとって同時刻になるためには、 もし、 2人の距離が
離れているならば、 被観察者は
の時間早くまばたきをすればいい。」という誤った考え方をしてしまうことになります。 実際には、 2人が同時に瞬きをした時は、 お互いに相手の方が遅れてまばたきをしたように認識するのです。 相対性理論は、「 情報がどのように観察者に伝わり、 それが観察者からどのように認識されるのか?」ということに関しては、 言及していません。 なぜなら、 相対性理論は、 観察者の認知を追及する「 認識論 」の理論ではなくて、 観察者の主観的な時空間における物質の客観的な運動を求める「 物理学 」の理論だからです。ですから、「 2つの空点の同時刻の相対性 」について証明するためには、 時間座標が等しい2つの時空点が、 座標変換によって、 時間座標が異なる2つの時空点になってしまうことを言えばいいのです。 それには、 ローレンツ変換の式を示しさえすればいいわけです。 私の説明の中の、 光や観察者の軌跡は必要ないのです。
3番目は、 「 2つの空点の同時刻の相対性 」は見かけの現象であるということです。 このことを説明するために、 光が「 それが放たれた時刻 」という情報を持っているものとして、 第1観察者から第2観察者への座標変換を考えてみましょう。 まず、 この章の最初に提示した2つの図( 図0901 と 図0902 )をもう一度見てください。 それが終わりましたら、 さあ思い浮かべてください、 田舎の駅の夜のプラットホームを。 特急列車がプラットホームを通過中に、 列車の前と後の両端に取り付けられた2つの時計が同時に光って、 その光がホームの中央で各駅停車の列車を待っている人( 第1観察者 )の視界に同時に飛び込んできます。 その光景を、 駅の側道を列車と反対方向に走っている車に乗った人( 第2観察者 )が見ています。 2つの時計が光ったのは、 ちょうど 列車の中央 と 第1観察者 と 第2観察者 が重なった時です。 図0901 の第1観察者にとって、 両方の時計が
を示しているという情報が同時に飛び込んできます。 このことを観察している 図0902 の第2観察者は、 次のように考えて混乱していきます。
第1観察者が言ってるように、 両方の時計が
を示しているという情報が第1観察者に同時に飛び込んでいったことは、 まず間違いない。 第1観察者にとっては時計は両方とも合っているのだ。
でも、 図0902のように、 私からすると、 2つの時計が光った時刻は、 どちらも
ではないし、 別々の時刻に私の眼に飛び込んでくる。 先に私の眼に飛び込んでくる先に光った時計は
よりも早く光ったのだから進んでおり、 後に光った時計は
よりも後に光ったのだから遅れている。 そうだ、 これが同時刻性の消失なのだ。
しかし待てよ!? 第1観察者と私(第2観察者)の観察内容の違いは、 列車の速さだけである。 私は、 第1観察者でもあるのだ。 ということは、 私の観察内容は、 図0901に似ており、 2つの光源の速さが速くなっているだけのことではないのか?
しかも、 私にとって移動している第1観察者も、 第1観察者にとっては移動していないのであるから、 私と第1観察者の両方ともが移動していない図を重ねてみよう。 すると、 このとき列車の速さは異なるけれども、 2つの時計は2人にとって同時に光り、 しかも、 光の伝わる速さは、 光源の速度には無関係でどんな慣性系でも一定なのだから、 2人にとって、 同時刻(
)に「時計は
の時刻に光りましたよ。」という正確な情報を持った2つの光が2人の眼に飛び込んでくるのではなかろうか?
もし、 列車の速さが 0 であったなら、 そのときは、 私は第1観察者になり、 第2観察者は第1観察者になる。
光源から一瞬放たれた光の中のある方向に移動する光子についていえば、 それは、 第0観察者、 第1観察者、 第2観察者、 それぞれにとって異なるものになっているのではなかろうか? つまり、 それぞれの観察者の慣性系の数だけ光子があるのではないのか?
ということは、 本当は、 2人とも同時刻に、 2つの時計が同時刻に光ったことを知るのだが、 相手のことについては、 そのようになっていることが、 お互いにわからないというのが真実なのではないだろうか?* 「 時計が狂っている 」というときには、次の2つの意味があります。
1番目は、「 この時計は5分進んでいる。」とか「 10分遅れている。」
という意味です。 2番目は、「 この時計は電池が切れかけていて、 ゆ
っくりと動いている。」とか、「 1時間に70分間を刻んでしまう。」とい
う意味です。
相対性理論では、 時計が狂うことはありません。「 2つの空点にお
ける同時刻の相対性 」や「 時の経過スピードの相対性 」は、 時計
の狂いを言っているのではありません。
第10章 4次元時空間の座標変換の例
スケッチしやすくするために、 4次元時空間を、 空間を2次元とする3次元時空間であると仮想してください。(1)第1観察者の座標系
( 問題1 ) 2つの物質が静止しており、 ある時刻に物質Aから光が放たれました。 光が放たれた時空点を時空原点として、 その光が物質Bに届くまでの状況をイプシュタインの時空間座標で、 図1001 に表してください。 ただし、 2つの物質はY軸上にあるものとしてください。
( 解答 )
図1001


* 時空点の座標は次のように表されます。

(2)第2観察者の座標系
( 問題2 ) 上記の状況を、 第1観察者に対してX軸の負の方向に速さ
で等速直線運動をしている人が観察した状況を、 光が放たれた時空点を時空原点として、 図1002 に表してください。( 解答 )
図1002


*
の大きさも
の大きさも、 共に
です。