ばいおりん の 慣性系相対性理論

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索引
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2016.11.18 更新


            目    次

第1章  固有時間こそ相対的なものである

第2章  相対時間(固有時間)の本当の役割とは何か?
第3章  光の速さを1とする新しい単位系の提唱
第4章  ローレンツ変換
第5章  相対時間と絶対時間の関係
第6章  ミンコフスキーからイプシュタインの4次元時空間へ
第7章  速度の合成
第8章  イプシュタインの4次元時空間の座標変換
第9章  2つの空点における同時刻の相対性
第10章  4次元時空間の座標変換の例
第11章  運動している物は時間が遅れ空間が縮む?
第12章  第3者的観察の放棄 と 新しい座標変換
第13章  光源の運動と光の振動数
第14章  3つの公理と1つの定理
第15章  4次元時空間運動量
第16章  質量とは何か
第17章  完全非弾性衝突による静止質量の増大
第18章  物質の運動と重力場
第19章  電流と電気量
第20章  2つの電荷の間に働く電気力
第21章  2つの電荷の間に働く磁気力
第22章  電場と磁場の統一
第23章  特殊相対性理論のあらすじ
第24章  ばいおりんの慣性系相対性理論の要点




は  じ  め  に

  子供にとっての勉強や運動が、 将来の立身出世だけを目的とする強制的なものになってはならないように、 大人にとっての勉強も、楽しみながら自然や社会のしくみを理解したり、 味わいながら人の心や生きる智恵を学んだりするものであってほしいと思います。
  私は、 アインシュタインの相対性理論に出会った時、 その不思議な世界観に魅了され、 夜も眠らず友達と語り明かしたことを覚えています。 それから、 暇をみては楽しい想像の世界に戯れているうち、 そういう大学生のための相対性理論の手引書を作ってみたいと思うようになり、 本を書きました。( このホームページでは、そのダイジェストを、 訂正したり加筆したりして、 紹介させていただいております。)
  しかし、 独学のために相対性理論を多分に誤解しており、 定説と違うことを、 恥ずかしげもなく、 ぬけぬけと述べていまして、 誠に恐縮しております。 そこで、 どうか本書の内容を鵜呑みにせず、 専門家の方が書かれた特殊相対性理論の本と併読していただき、 本書を批判しながら読んでください。 また、 本書では、 つじつま合わせのために、 自分勝手に作った「 法則 」を持ち出しています。 しかし、 それは私の考えをなるべくわかりやすくお伝えするための方便ですので、 どうかお許しください。
  言葉は人間の生活の中から生まれてきたものですので、 人間を超えた万物の運動を対象とする物理学を、 言葉だけで記述することは難しいと思います。 ですから、 図や式を用いてそれを補っていくわけですが、 それにしても、 物理学の中では、 言葉は正確に使われなければならないと思います。 例えば、「 時間 」という言葉は、 日常生活の中では「 時刻 」と同じ意味でも用いられていますが、 この2つはきちんと区別されなければならないと思います。 そこで、 本書の中では、 次のような言葉を使用させていただきたいと存じますので、 ご了承ください。

      ( Time ) ・・・・・・・・・・・・・ 概念としての「 時間 」のこと
      時点( Time Point ) ・・・・・・ いわゆる「 時刻 」のこと
      時間 ( Time Interval ) ・・・・ 2つの「 時点 」の差
      ( Space ) ・・・・・・・・・・・・ 概念としての「 空間 」のこと
      空点( Space Point ) ・・・・・ いわゆる「 位置 」のこと
      空間( Space Interval ) ・・・ いわゆる「 距離 」のこと






第1章  固有時間こそ相対的なものである

  万物は、 絶えず、 4次元時空間を光の速さで移動しています。 光は空間を光の速さで、 私達は固有時間を光の速さで、移動しています。 また、 光の5分の3の速さで空間を移動する物質は、 同時に、 光の5分の4の速さで固有時間も移動しています。
                                 です。

  固有時間の移動と空間の移動とで異なる所は、「 空間はプラス方向にもマイナス方向にも移動することができるが、 固有時間はプラス方向にしか移動することができない。」ということと、「 空間は3次元であるが、 固有時間は1次元である。」ということです。 万物は、 平等に歳をとります。 万物は、 固有時間を移動すると歳をとるのですが、 空間を移動しても同じ様に歳をとるのです。 「 双子のパラドックス 」 とは、 このことを認識し忘れた時に陥る罠です。 万物が歳をとるのは 時間 によってであり、 固有時間 によってではありません。 私たちは、 時間 と 固有時間 をきちんと区別して認識する必要があるのです。

  では、 時間 と 固有時間 の違いについて勉強していきましょう。 そのためにまず、 無重力宇宙空間を思い浮かべてください。 今、 同じ規格の2つのボールが、 それぞれ、 同じ速さでスピン( 自転 )しながら、 限りなく近い2つの平行線上( 同一直線上とみなしてください。)を異なる速さで同じ方向に等速直線運動しています。 そして、 速い方のボールが、 遅い方のボールのすれすれを通って、 まさに今、 追い越そうとしています。 それをあなたは、 遅い方のボールと同じ速度で運動している宇宙船に乗って観察しています。 その時刻での2つのボールの位置を原点として、 それから  t の時間後までの2つのボールの運動を4次元時空間に作図すると、 図0101のようになります。

  図0101
   

  縦軸は固有時間、 横軸は空間です。( 便宜上、3次元空間を1次元で表しています。)2つのボールの質量を m  と m で示しています。 2つのボールの運動を表すベクトルは同じ大きさです。 同じ時刻にそれぞれ時空原点にあった2つのボールは、 それから  t 時間後の同時刻には、 それぞれ時空点C と 時空点Bに存在します。( * 時空点とは、 4次元時空間座標の位置のことです。)

  では次に、 速い方のボールと同じ速度で移動する宇宙船から観察するとどうなるでしょうか? そこで、 あなたのお友達に登場していただき、 速い方のボールと同じ速度で移動する宇宙船に乗って、 t 時間、 2つのボールを観察してもらいましょう。 すると、 図0102 のようになります。

  図0102
  

  では、 図0101 と 図0102 を比べてみましょう。 t の大きさは同じです。 質量 m  と 質量 m が入れ替わっています。 固有時間の大きさも入れ替わっています。 あなたとあなたのお友達は、 それぞれ、「 私は、 t 時間 =  t 固有時間 をかけて、 自分の目の前に止まっているボールを観察しました。」と主張するのですが、「 いいえ、あなたが自分の目の前に止まっているボールを  t 時間 かけて観察したことは認めるけれど、 あなたはそれを  t 時間 よりも少ない固有時間をかけてしか観察していません。」とお互いに批判し合います。 おっと、 2人ともけんかをしては困るなあ。 そう、 2人とも言っていることは間違っていませんよ。 さあ、 これから私の言うことをよく聞いてください。
  1番目に、 時間はこれらの図ではベクトルの大きさに相当します。 ですから、 時間はベクトルではありません。 しかし、 固有時間はベクトルです。 時間は、 物質の4次元時空間の位置( 時空点 )を決めるパラメーターですが、 固有時間は、 方向を持っており、 互いに直交する4つの座標軸で構成される4次元時空間の中の1つの座標軸です。
  2番目に、 時間はすべての物質の運動に共通する絶対的なものですが、 固有時間は観察をされる物と観察をする者との関係によって変化する相対的なものです。 そこで、 私は、 これから、 時間を「 絶対時間 」と言い、 固有時間を「 相対時間 」と言うことにします。 ただし、 ここで1つ言っておかなければならないことがあります。 それは、 絶対時間も相対時間も同じ物差しで測られなくてはならないということです。 つまり、 単位絶対時間と単位相対時間は同じ大きさであるということです。

  さて、 図0101 に戻ってください。 今度は、 あなたのお友達に、 あなたの乗っている宇宙船に対して、 あなたの宇宙船に対する速い方のボールの速度と 方向が反対で大きさが同じ 速度で、 飛んでもらいます。 では、 あなたのお友達が観察した2つのボールの運動を4次元時空間で表してみましょう。 図0103 のようになりますよね。

  図0103
  

  あっ!すみません、 ちょっと待ってください。 実を言うと、 図0103 は間違いなのです。 どこが間違いかと言いますと、 それは、 速い方のボールの速さを、
       と考えたことです。
実は、 速い方のボールの速さは、 それよりも遅いのです。 つまり、 速さの合成には単純な加法法則が通用しないのです。 詳細は、 第7章「 速度の合成 」で述べることにします。

  では、 再び図0101 に戻ってください。 あれっ、 そうこうしているうちに、 一方のボールが随分と先の方に行ってしまいました。 そこで、 あなたにやってもらいたいことは、 目の前で止まっているボールを、 遠ざかっているボールに向かって思い切りバットで打って、 2つのボールを衝突させてもらうことです。 そして、 このことを4次元時空間で表してください。 では、 よろしくお願いします。

  図0106
    

  はい、 よくできましたね。 2つのボールが衝突する時空点は、 バットで打たれたボールは点Cであり、 先を飛んでいたボールは点Dですね。 ここで言いたいことは、 衝突( 同時点同空点 )の条件は、 絶対時点( 絶対時刻 )が一致し、 かつ、 空点( 空間位置 )が一致するということであり、 固有時点( 相対時刻 )は一致しなくてもよいということです。



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