万物は、 絶えず、 4次元時空間を光の速さで移動しています。 光は空間を光の速さで、 私達は固有時間を光の速さで、移動しています。 また、 光の5分の3の速さで空間を移動する物質は、 同時に、 光の5分の4の速さで固有時間も移動しています。
です。
固有時間の移動と空間の移動とで異なる所は、「 空間はプラス方向にもマイナス方向にも移動することができるが、 固有時間はプラス方向にしか移動することができない。」ということと、「 空間は3次元であるが、 固有時間は1次元である。」ということです。 万物は、 平等に歳をとります。 万物は、 固有時間を移動すると歳をとるのですが、 空間を移動しても同じ様に歳をとるのです。 「 双子のパラドックス 」 とは、 このことを認識し忘れた時に陥る罠です。 万物が歳をとるのは 時間 によってであり、 固有時間 によってではありません。 私たちは、 時間 と 固有時間 をきちんと区別して認識する必要があるのです。
では、 時間 と 固有時間 の違いについて勉強していきましょう。 そのためにまず、 無重力宇宙空間を思い浮かべてください。 今、 同じ規格の2つのボールが、 それぞれ、 同じ速さでスピン( 自転 )しながら、 限りなく近い2つの平行線上( 同一直線上とみなしてください。)を異なる速さで同じ方向に等速直線運動しています。 そして、 速い方のボールが、 遅い方のボールのすれすれを通って、 まさに今、 追い越そうとしています。 それをあなたは、 遅い方のボールと同じ速度で運動している宇宙船に乗って観察しています。 その時刻での2つのボールの位置を原点として、 それから t の時間後までの2つのボールの運動を4次元時空間に作図すると、 図0101のようになります。
図0101縦軸は固有時間、 横軸は空間です。( 便宜上、3次元空間を1次元で表しています。)2つのボールの質量を m 0 と m で示しています。 2つのボールの運動を表すベクトルは同じ大きさです。 同じ時刻にそれぞれ時空原点にあった2つのボールは、 それから t 時間後の同時刻には、 それぞれ時空点C と 時空点Bに存在します。( * 時空点とは、 4次元時空間座標の位置のことです。)
では次に、 速い方のボールと同じ速度で移動する宇宙船から観察するとどうなるでしょうか? そこで、 あなたのお友達に登場していただき、 速い方のボールと同じ速度で移動する宇宙船に乗って、 t 時間、 2つのボールを観察してもらいましょう。 すると、 図0102 のようになります。
図0102 では、 図0101 と 図0102 を比べてみましょう。 t の大きさは同じです。 質量 m 0 と 質量 m が入れ替わっています。 固有時間の大きさも入れ替わっています。 あなたとあなたのお友達は、 それぞれ、「 私は、 t 時間 = t 固有時間 をかけて、 自分の目の前に止まっているボールを観察しました。」と主張するのですが、「 いいえ、あなたが自分の目の前に止まっているボールを t 時間 かけて観察したことは認めるけれど、 あなたはそれを t 時間 よりも少ない固有時間をかけてしか観察していません。」とお互いに批判し合います。 おっと、 2人ともけんかをしては困るなあ。 そう、 2人とも言っていることは間違っていませんよ。 さあ、 これから私の言うことをよく聞いてください。
1番目に、 時間はこれらの図ではベクトルの大きさに相当します。 ですから、 時間はベクトルではありません。 しかし、 固有時間はベクトルです。 時間は、 物質の4次元時空間の位置( 時空点 )を決めるパラメーターですが、 固有時間は、 方向を持っており、 互いに直交する4つの座標軸で構成される4次元時空間の中の1つの座標軸です。
2番目に、 時間はすべての物質の運動に共通する絶対的なものですが、 固有時間は観察をされる物と観察をする者との関係によって変化する相対的なものです。 そこで、 私は、 これから、 時間を「 絶対時間 」と言い、 固有時間を「 相対時間 」と言うことにします。 ただし、 ここで1つ言っておかなければならないことがあります。 それは、 絶対時間も相対時間も同じ物差しで測られなくてはならないということです。 つまり、 単位絶対時間と単位相対時間は同じ大きさであるということです。
さて、 図0101 に戻ってください。 今度は、 あなたのお友達に、 あなたの乗っている宇宙船に対して、 あなたの宇宙船に対する速い方のボールの速度と 方向が反対で大きさが同じ 速度で、 飛んでもらいます。 では、 あなたのお友達が観察した2つのボールの運動を4次元時空間で表してみましょう。 図0103 のようになりますよね。
図0103 あっ!すみません、 ちょっと待ってください。 実を言うと、 図0103 は間違いなのです。 どこが間違いかと言いますと、 それは、 速い方のボールの速さを、
と考えたことです。
実は、 速い方のボールの速さは、 それよりも遅いのです。 つまり、 速さの合成には単純な加法法則が通用しないのです。 詳細は、 第7章「 速度の合成 」で述べることにします。
はい、 よくできましたね。 2つのボールが衝突する時空点は、 バットで打たれたボールは点Cであり、 先を飛んでいたボールは点Dですね。 ここで言いたいことは、 衝突( 同時点同空点 )の条件は、 絶対時点( 絶対時刻 )が一致し、 かつ、 空点( 空間位置 )が一致するということであり、 固有時点( 相対時刻 )は一致しなくてもよいということです。